脱原発依存が焦点、電源構成の論議始まる "新電源"としての省エネも重要に

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京都大学原子炉実験所教授の山名元氏は、「原子力を怖い、減らしたいと思う国民感情と、エネルギー・環境政策のうえで原子力は重要だとする考え方の間には大きなギャップがある」としたうえで、「国民を説得するためには、国民負担や安全保障上の効果などの数値的な情報や証拠の提示が重要」と語った。

製品評価技術基盤機構理事長の安井至氏は、3E+Sを基本に各エネルギー源を定量的に比較することを通じ、「誰もが理解できる透明度の高いロジックが重要だ」と指摘した。

原発立地自治体である福井県知事の西川一誠氏は、「原子力規制委が安全の責任を負わず、政府は規制委の判断に任せるという状況では、国民の原子力に対する信頼は回復しない」との見方を示し、やはり原子力の安全性に対する国民の不安払拭が重要な課題とした。

電力だけでなく熱利用を含め検討へ

地球環境産業技術研究機構理事・研究所長の山地憲治氏は、「エネルギーミックスは電力のみならず、熱利用も含めて一次エネルギー全体を検討することが必要」と指摘。また、電源構成の検討においては、「コージェネを評価するためにも自家発電・自家消費を含めた総発電電力量で考えることが重要」と述べた。 

野村総合研究所顧問で元総務大臣の増田寛也氏は、「資源調達を巡る各国間の競争や原子力の平和利用での国際協調など国際的視点が重要」と話す。また、「電力自由化が進む中でもエネルギーミックスを実現するには、原子力のリプレース(建て替え)も避けて通れない議論」と指摘。さらに、「6月初めのG7で何らかのコミットをする必要がある。それをメドに議論を進める覚悟が必要」と述べた。

最後に議長の坂根氏が発言し、「原発ゼロ、化石燃料90%という現状を国際社会は認めない」との認識を示し、「まずは省エネと再エネがどこまで実現できるのか、ここを議論の出発点にしてはどうか」と提案した。また、「バイオマスの熱利用まで入れた地産地消が大事」と語った。

こうした各委員の意見を聞くと、今のところ電源構成における原子力の比率は15~20%程度を軸に議論が進みそうな印象が強い。だが、省エネや人口減少による需要見通しの抑制や、再エネ導入の野心的目標設定など、原子力比率を左右する重要な変数も多い。電源のベストミックスはエネルギー政策の基本方針とも言えるだけに、今後の議論の動向が注目される。

中村 稔 東洋経済 編集委員
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