脱原発依存が焦点、電源構成の論議始まる "新電源"としての省エネも重要に

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続いて各委員から、今後の議論の進め方やエネルギーミックスなどに対する意見が出された。各委員の基本的考え方がわかり、今後の議論に影響すると考えられるため、以下にその要点をまとめる。

マクロ経済に寄与する電源構成という視点

日本エネルギー経済研究所理事長の豊田正和氏は、「エネルギーコストの最小化や雇用促進などマクロ経済に寄与するエネルギーミックスであってほしい。電気料金が産業用で3割、家庭用で2割上がっている状況は放置できない。原発ゼロが続き、再エネ導入コストが急増すれば、さらに上昇する」と懸念を示した。そして、東日本大震災後に気候温暖化に対する国民の関心が低下していると指摘し、増加傾向にある石炭火力発電への歯止めを提言。CO2を排出しない原子力の重要性を強調した。

ちなみに、原発を保有しない沖縄電力でも、大震災後に家庭用の電気料金が2割近く上昇した。料金上昇の最大要因は、円安の影響を含めた燃料輸入価格の高騰である。

慶應義塾大学准教授の野村浩二氏は、「エネルギー政策において"3E+S"の基本方針には賛成だが、マクロの経済成長なしには実現は困難になる」とし、「アベノミクスの成長戦略との整合性が大事」と語る。3E+Sはエネルギー政策の基本原則とされるもので、3Eは安定供給、経済効率性、環境適合性、Sは安全性を指す。 

製造業首脳は「電気料金低減が火急の課題」

日産自動車副会長の志賀俊之氏は、「(これから議論される)ベストミックスが、今年末に開催されるCOP21(国連気候変動枠組条約の第21回締約国会議)での日本の約束になる」としたうえで、カーボンフリーの再エネの拡大策として、ベースロード電源となりうる地熱発電の推進や、蓄電池の活用の重要性を挙げた。加えて、製造業の国際競争力強化のためには電気料金の問題が大きいと指摘した。

昭和電工会長の高橋恭平氏も「産業界の国際的競争力の観点から電気料金の値下げが火急の課題」と主張。太陽光発電について「出力が極めて不安定であり、送電や蓄電の設備で膨大なコストがかかる」とする一方、原子力を一定レベル維持する必要性を強調した。

電気メッキ加工を行う日本電鍍工業代表取締役の伊藤麻美氏は、「中小企業として、これ以上の電気料金の上昇は勘弁してもらいたい」と訴えた。

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