アメリカの「景気後退懸念」はかなり行きすぎだ 「かど」がとれれば今後の株価も丸く収まる?

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その一方で、エコノミストによる予想の集計値としてよく用いられるブルーチップ調査の結果によれば、4~6月期は平均値で前期比3%近いプラス成長になるとの予想だ。調査対象の中で最も弱気(慎重)な10人のエコノミストの予想平均値を見ても、同四半期は1.5%程度のプラス成長が見込まれている。

確かにアトランタ地区連銀「GDPNow」の大幅なマイナス見通しは市場の話題となっているが、その数値をそのまま鵜呑みにするのはためらわれる。

アナリストは間違っている?

ところが、アメリカの株式市場において、投資家や専門家は「株価が低迷しているのは景気が悪化しているからに決まっている」と、株式市場の暗い雰囲気に心理的に飲み込まれ、悪い経済指標ばかりを大いに掘り起こして騒いでいる。

実は企業収益見通しについては、ファクトセット社が集計するアナリスト予想の平均値で見ると、いまだに堅調だ。S&P500種指数採用企業の2022暦年のEPS(1株当たり利益)予想値は、直近の7月1日時点でも前年比10.1%の増益だ。

ところが、こうした企業アナリストたちの利益見通しに対して、「株価がこれだけ冴えないのだから、アナリストの見通しは誤っている」と決めつける声を聞く。

そうした声を報道する例は多いが、例えば6月28日付のブルームバーグニュースでは、複数のアメリカの証券会社幹部が、株式市場における暗い展望が正しく、アナリストたちが楽観的すぎる、と述べている。

その記事では、ある幹部は「今後の企業収益についての展開は2つしかない」と語っている。その1つは、これからアナリストが自身の収益見通しを大きく下方修正する展開。もう1つは、アナリストが見通しをあまり変えないが、実際の企業収益の結果がアナリスト見通しよりはるかに悪いものとなる展開。このどちらかしかない、との発言だ。

以下は日本国内でのエピソードだ。前回の当コラム「『それでも米国株は年内上昇する』と予想するワケ」で前掲のS&P500ベースの収益見通しについて、6月3日時点では10.2%増益見通しだったものが、同月17日には10.6%に上方修正された、と書いたのを覚えておいでの方も多いと思う(それが7月1日時点では、前述のように10.1%に下方修正され、4週間前の水準にほぼ戻っている)。

そうした「わずか0.4%幅ではあるが、アメリカでの収益見通しが6月17日に上方修正された」という点を、筆者が某都市で講師を務めたセミナーで、披露したときのことだ。

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