アメリカの「景気後退懸念」はかなり行きすぎだ 「かど」がとれれば今後の株価も丸く収まる?

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こうした国際商品市況の落ち着きもあって、アメリカの10年国債利回りは先週は2.89%と、2.9%をも割り込んで週を終えている。時間差を伴って継続する物価指数の高い上昇率に対応するため、連銀はまだ利上げを進め、短期金利の上昇は続こうが、長期金利は上げ止まった感も出ている。

こうした国際商品の価格下落や長期金利の反落は、景況感の悪化による部分もあり、株式市場にとって手放しでは歓迎できない。しかし、これまで騒いでいたインフレの高進、長期金利の上昇と、景況感悪化の両方が、同時には成立しにくいということが、商品市場や債券市場によって示されたということだろう。まだ株式市場では2種類の懸念の同時進行を「スタグフレーション懸念」として騒いでいる感があるが、それも悲観にすぎると考えている。

そうした「マクロ景気が強いから企業収益はよいかもしれないが、インフレが高進して金利が上昇するから株価が心配」という懸念と「マクロ景気が弱いから企業収益が悪化するので、インフレと金利が落ち着いても株価が心配」という懸念の間で揺れ動いているのは、全体観だけではなく、一部の業種についてもみられる。

冒頭でSOX指数の底割れについて述べたが、以前は「半導体が不足しており、さまざまな製品(とくに自動車)が十分に生産できないので、供給不足から幅広い製品価格が上がってインフレが心配」と頭を抱えていたものが、今では「景気が悪化して半導体に対する需要が減って、半導体関連企業の収益が心配」と別の不安を騒いでいる。景況感がどちらに向かおうと、心配ばかりできる市場の能力には感嘆するばかりだ。

「かど」が取れれば丸く収まる?

つらつら述べてきたように、いまだにアメリカの株式市場は過度の懸念にとらわれているように判断される。そうした悲観論の横行は、6月6日付の当コラムで紹介した、Fear and Greed Indexにも表れている。同指数は先週末でも24と、極度の悲観(0~25)の範囲にある。

昔から「角」がとれれば「丸く収まる」というが、株式市場が大いに楽観とはならなくとも、過度の悲観の「過度」が取れ、景気や企業収益の実態を正しく反映すれば、株価が上昇して丸く収まるのではないだろうか。それはアメリカに限らず、日本株も含む世界株価にとっても、プラス要因だろう。

(当記事は会社四季報オンラインにも掲載しています)

馬渕 治好 ブーケ・ド・フルーレット代表、米国CFA協会認定証券アナリスト

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まぶち はるよし / Haruyoshi Mabuchi

1981年東京大学理学部数学科卒、1988年米国マサチューセッツ工科大学経営科学大学院(MIT Sloan School of Management)修士課程修了。(旧)日興証券グループで、主に調査部門を歴任。2004年8月~2008年12月は、日興コーディアル証券国際市場分析部長を務めた。2009年1月に独立、現在ブーケ・ド・フルーレット代表。内外諸国の経済・政治・投資家動向を踏まえ、株式、債券、為替、主要な商品市場の分析を行う。データや裏付け取材に基づく分析内容を、投資初心者にもわかりやすく解説することで定評がある。各地での講演や、マスコミ出演、新聞・雑誌等への寄稿も多い。著作に『投資の鉄人』(共著、日本経済新聞出版社)や『株への投資力を鍛える』(東洋経済新報社)『ゼロからわかる 時事問題とマーケットの深い関係』(金融財政事情研究会)、『勝率9割の投資セオリーは存在するか』(東洋経済新報社)などがある。有料メールマガジン 馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」なども刊行中。

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