アメリカの「景気後退懸念」はかなり行きすぎだ 「かど」がとれれば今後の株価も丸く収まる?
すると、それを語った直後、セミナー会場には水を打ったような静寂が広がったのだった。「あれっ、アメリカの企業収益動向に、皆さんあまり関心がないのかな」と思ったら、その直後に会場がざわざわし始め、手が上がり始めて、参加者の方々が「収益見通しが上方修正されるはずがありません。馬渕さんの数字の見間違いではないですか?」「そのデータベースがおかしいのではないですか?」といった、とても上方修正などは信じられない、という声が次々とあがった。
これも、投資家が株価の軟調な動向に心理的に支配され、実態の堅調さを素直に認めることができなくなっている、という現象を示しているといえよう。現実の経済や企業収益に基づいて株価が形成されるはずが、逆に株価の振れが景況感や企業収益の展望を歪めてしまっているのだろう。この点でも、足元のアメリカの株価(ひいては、それに引きずられている主要先進国の株価)は、売られすぎだと解釈される。
インフレ懸念や長期金利上昇懸念はどこへ?
こうして行きすぎたアメリカの景気悪化懸念に支配されている主要国の株式市場ではあるが、少し前まで大騒ぎしていたインフレ懸念や長期金利上昇懸念はどこに行ったのであろうか。
インフレについては、最終的な経済への悪影響を推し量るのであれば、消費者物価などの経済統計を見るべきだろう。エネルギーや原材料価格、賃金などが上昇し、それが製品やサービスなどの最終価格に転嫁されるには時間差があるので、物価指数の前年比での高止まりはまだしばらく続きそうだ。
しかし、市場が最も憂慮してきた国際商品市況の上昇についてはどうか。まず原油の国際指標であるWTI原油先物価格は、6月は一時1バレル=120ドルを超える局面もあったが、足元では軟化し、6月22日には一時1バレル=101.53ドルの安値をつけた。先週末も108.46ドルと、110ドルを下回った水準で引けている。
一方、幅広い産業で用いられる銅の価格は、ニューヨークの先物で見ると、すでに5月以降は軟化が目立っていた。最近では6月上旬に1ポンド当たり4.6ドル手前で高値をつけたあと、先週末は3.61ドルまで下落して引けている(なお、ロンドンの銅先物の週末引け値は1トン当たり8055ドルで、単位が異なることに留意されたい)。
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