2005年度も原料価格高騰だが、値上げ効果で増益シナリオは維持へ

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12月上旬、新日本製鉄など日本の高炉メーカー各社と、サプライヤー大手の英豪BHPビリトンと三菱商事との合弁会社であるBMAとの強粘炭の価格交渉が2004度比2.2倍増の1トン当たり約125ドルで決着した。高炉各社の強粘炭の輸入量は年およそ3200万トン。1トン当たり約70ドルの上昇で、これだけで2200億円のコストアップ要因となる。これから価格交渉が本格化する高炉吹き込み用の微粉炭、鉄鉱石も時需給の逼迫を背景としてサプライヤーが攻勢を強めることは確実。総額では7000億円超のコスト増となった2004度を上回る原料価格の上昇となる可能性が濃厚だ。
 市場の一部では、これで高炉各社の2005年度増益シナリオに黄色信号が点ったのではとの声が出ているが、これは杞憂に終わる公算が大きいだろう。
 今2004年度、高炉各社は国際価格に比べて割安な水準にある鋼材価格の是正、原料高の価格転嫁を目的として自動車、造船、家電など主要ユーザーに対して値上げの要請を強化。需給逼迫を追い風として、2004年9月中間期では、新日鉄が2003年度の1トン当たり5万0600円から5万8100円と15%の値上げに成功したのをはじめ、JFEスチールも5万0500円から5万7700円と14%の値上げを実現。住友金属工業、神戸製鋼所もそれぞれ6万4500円から7万2200円と12%、4万7300円から5万3500円と13%の値戻しを達成、原料価格の上昇を吸収した上、採算を一段と向上させている。今2004年度後半について新日鉄は第2四半期(7~9月)並みの6万0300円を前提としているもようだが、今秋、自動車や造船向けで2度目の値上げを実現したことを考えると、これは慎重。JFEは上期に対して8%前後、住金も10%前後の上昇を見込んでおり、高炉各社とも実際には1割前後の値上げを実現する可能性が高い。2005年度は2004年度下期並みの価格が1年間貢献すると想定すると、2000年度に比べて少なくとも5%前後の価格効果が見込める(実際には、2004年度下期も徐々に値上げが浸透していくため、5%以上の効果が期待できるだろう)。
 2005年度の原料価格の高騰による影響額は、2004年度と同程度の7000億円とすると1トン当たり6400円弱。2005年度は販売価格を10%前後値上げすれば、コストアップ要因を吸収することができることになるが、2004年度後半の値上げで5%は達成、2005年度は残り5%の値上げを達成するばよいことになる。現在、需給は新日鉄、JFEで半期で200万~250万トンの注文を断らざるをえない状況が続いており、2005年は5%程度の値上げが実現できる公算が濃厚。2005年度の増益シナリオを変更する必要はないだろう。
【野口昇記者】


(株)東洋経済新報社 電子メディア編集部

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