利益「3兆円」に肉薄、トヨタに還元の圧力 今期の営業利益は過去最高の2.7兆円へ
今回の春闘でトヨタ自動車労働組合は、ベアに相当する賃金改善分を6000円要求する方針を固めている。
2014年は組合の4000円のベア要求に対して、会社側は2700円を回答し妥結した。満額回答とはならなかったが、かつてベア自体を否定したトヨタがそれを復活させた意味は大きかった。今年はベアは当然で、焦点となるのはその水準になるはずだ。
「利益が出れば税金を払い、従業員にも還元するのは当然。経済の好循環も一つだが、中長期での国内生産の競争力をそぐことになってもいけない。労使でしっかり議論したい」と佐々木卓夫常務役員が言うように、賃金交渉は企業の競争力を考えながら労使で決めるのがスジ。が、好むと好まざるとにかかわらず、デフレ脱却の一翼を担わされるトヨタは、政治的な配慮も求められてしまう。
株主に対する配慮は?
もっとも、期待するのは政府や従業員、取引先だけではない。豊田章男社長は新年の動画メッセージで「ステークホルダーといいますと、まず第一に、やはり株主様だと思います」と語っている。現在トヨタが公約している配当性向は30%。利益水準が上がれば配当額も増えるが、還元率の引き上げを求める声も投資家から強まりそうだ。
空前の利益水準をたたき出し、還元を欲しがる声は強まるばかり。高度なバランス感覚を問われるのは、トヨタゆえの宿命かもしれない。
(「週刊東洋経済」2015年2月14日号<9日発売>「核心リポート01」を転載)
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