利益「3兆円」に肉薄、トヨタに還元の圧力 今期の営業利益は過去最高の2.7兆円へ

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「(トヨタが)報告したいというお話は、競争力強化のために、下請け企業に対して毎年半期ごとに納入価格の改善を求めている。それを14年度下期はゼロ、つまり構造改革した分は、下請け企業の利益として取れるようにしましたということです。それから、15年度上期も同様にします、それを下請け企業の賃上げ原資にしてもらえればいいと思っていますというお話でした」

2月4日に行ったトヨタの第3四半期決算会見。佐々木卓夫常務役員(写真右)は「利益が出れば税金を払い、従業員にも還元するのは当然」と話していた

甘利担当相が言及した「納入価格の改善」とは、トヨタが行っている部品メーカーに対する価格改定のこと。従来は半年に1度、1%程度の値下げを求めてきた。が、2014年度下期(2014年10月~2015年3月)は、当初1%弱で部品メーカーに告知していたのを撤回、値下げを初めて見送った。

言うまでもなく、完成車メーカーは多くの部品メーカーに支えられている。だが、トヨタが最高益を満喫する一方、値下げ要求で経営難にあえぐ中小部品メーカーは少なくない。これを放置すれば、トヨタ自身の競争力低下にもつながりかねない。今回の値下げゼロは、トヨタが吸い上げてきた原価改善効果を部品メーカーに残し、経営支援をする意味合いも持つ。

アベノミクスの”体現者”

例年なら新年度上期の価格交渉は2月後半から3月にかけて行われる。2月3日に第3四半期決算に臨んだデンソーやアイシン精機の首脳は、2015年度上期の価格改定の対応を問われ、「トヨタからまだ話はない」と口をそろえた。

しかし、トヨタは甘利担当相に「15年度上期も(14年度下期と)同様にします」と、部品メーカーに値下げを求めない方針を報告済みだ。アベノミクスを享受するだけでなく、忠実に実践しているという言い方もできよう。

さらに安倍首相は、「春の賃上げについて最大限の努力を図っていただくよう要請したい」と述べており、アベノミクスの“体現者”はこれも期待されているのだ。

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