当時の日本はまだ、観光地として人気があったわけではありませんでした。そして今、コロナ禍で外国人観光客が減り、昔に逆戻りしているかのようです。ある意味、訪問するには非常にいいときですが(パリも同様です)、その一方で、観光地にとって外国人観光客は地元の経済や名声を保つために重要な存在になっていると感じます。
パリっ子である私は、あらゆる国籍の人が混ざり合ってその場所を楽しんだり、賞賛したりするのは、いつでも楽しいことだと知っています。たとえそのせいで街が騒がしくなったり、混雑したりしたとしても。
アーティストと科学者による没入的音楽空間
今回の訪問ではまた、京都芸術センター(旧学校を転用した芸術センター)で、ヤニック・パジェさんによる非常にユニークで魅力的なパフォーマンスを鑑賞する機会がありました。パジェさんはフランスの作曲家・指揮者で、日本で17年間活動しています。彼は数年前から、有名な科学者・物理学者の橋本幸士さんと、弦理論に関するコラボレーションを行っています。
アインシュタインの一般相対性理論と量子理論を統一する弦理論は、「宇宙に存在する全てのもの(光、物質、基本的な力など)は素粒子から構成されており、それらの素粒子自体は『振動する弦』という単一の要素から構成されている」というものです。
パジェさんと橋本さんは共同で、この理論の科学的基礎、特に弦が相互にくっつくことに基づいて、音楽言語を創作しました。パジェさんはこの言語を使用して「Consciousness(弦理論交響曲)」を作曲しました。
第2楽章「量子」は2022年6月に演奏されました。これは、やはり数学や物理学に情熱を注ぐ陶芸家の黒川徹さんとのコラボレーション。パジェさんと黒川さんは共同で一連の作品を制作し、新たな陶磁楽器「セラモフォン」を作り出しました。
パジェさんは、毎晩のパフォーマンスを完全に没入的な音の宇宙の中で行い、聴衆はまるで物質の中に入り込んだような感じがして、まったく新しいサウンドを聞いているという印象を持ちました。聴衆を情熱と静穏が入り混じった別世界に運ぶ、フランス人と日本人による特別なコラボレーションです。
古いものと、新しいもの、さまざまな文化、それが無理なく混じり合っているのが京都の魅力です。食の世界でもそれは同じ。京都では最近、とても伝統的で日本的な空間において、料理やワインのチョイスでフランス風 (あるいは西洋風)のテイストが融合しているのを見かけることが増えているように感じます。
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