出会いから振り返る「相棒・亀山」復帰の真の狙い 1代目から4代目「相棒」を振り返ってみると…

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特命係の2人がどのようにして真の相棒同士になっていくか、というストーリーは、亀山薫以降の歴代の相棒においてもそれぞれのかたちで受け継がれた(ちなみに、これまでのすべての相棒役の名前が「か」で始まり「る」で終わるという有名な共通点があるが、最初は偶然の一致で、その後意識されるようになったらしい)。

2代目相棒は、及川光博演じる神戸尊。彼は、警察庁が右京を内偵する目的で送り込んだ“スパイ”だった。だから隠れて右京についての報告書を書いたり、右京に素直に従わず「お言葉ですが」と逆らったりする。だが少しずつ距離を縮め、結局特命係を離れてからも、右京の求めがあれば捜査に協力するような間柄になった。

成宮寛貴が演じた3代目の相棒・甲斐享は一番若い。右京が刑事としての資質を見抜き、自ら特命係にスカウトした。つまり2人は、文字通り師弟関係にある。

右京を目標に、懸命に頑張る享。ところが、その思いが彼を逆に追い詰める。法で裁かれない悪を自らの手で罰しようとした彼は結局犯罪に手を染めてしまい、警察を去ることになる。メインの刑事が犯罪者になるという掟破りの結末は、視聴者に大きな衝撃を与えた。

典型的なバディ“亀山薫”

そして4代目は、反町隆史が演じてまだ記憶に新しい冠城亘。前シリーズseason20の時点で、最も長く右京の相棒を務めた。法務省キャリアから警視庁に出向、その後正式に警察官となった変わり種である。

よく軽口をたたく飄々としたところもあるが、事件の真相究明のためには手段を選ばない一面も持つ。またそうかと思えば、人情味豊かなところもある。そんな一本芯の通ったつかみどころのなさは、右京とも共通する。この2人は、かなり似た者同士だ。

いずれ劣らぬ個性的な面々だが、そのなかで亀山薫は、最も典型的なバディだった。

かつての『あぶない刑事』(日本テレビ系、1986年開始)、近年では『MIU404』(TBSテレビ系、2020年放送)など2人組の刑事が活躍する「バディもの」は変わらず人気だが、基本になるのは対照的なキャラクターの組合せだ。

英国スタイルのスーツ姿にメガネの右京とワイルドなフライトジャケット姿の薫はまさにそうで、外見だけでなく、先述のように冷静沈着な右京と猪突猛進型の薫は、いわば「静」と「動」の好対照を成す。

一方、薫の後の右京と相棒の関係においては、それほどの明確なコントラストはなくなってきていたと思える。とりわけ冠城亘とは、組んだ期間が長かったこともあって、互いに大人なところのある成熟したバディになっていた。そこに生まれる安定感も魅力ではあったが、今回の亀山薫の再登場は、それを一度壊す思い切った策と言えるのではないだろうか。

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