実際、都内スーパーの鶏肉売り場を覗いてみると(2022年6月下旬)、ブラジル産鶏もも肉が98円/100g、国産鶏もも肉が118円/100gとなっていて、価格差は20円。以前なら輸入鶏肉は国産鶏の半額ほどだったので、このところの円安を考えると、もう価格差はなくなってしまうと思われます。
ウクライナの特産である小麦の高騰が話題になっていますが、鶏肉も回り回って今回の紛争の影響を大きく受けているというわけです。また、ウクライナは、ヨーロッパ、中東、アフリカへの鶏肉の供給国であったのですが、今回の紛争で黒海が封鎖され周辺国の物流も滞っており、ヨーロッパや中東の国がブラジル産の鶏肉を輸入し始めたことも、日本の輸入鶏肉の高騰につながっています。
値上げに踏み切った「鳥貴族」
先日、焼き鳥居酒屋を展開する鳥貴族ホールディングスの大倉忠司社長と、講演会で一緒になり今の日本の食肉について話をする機会がありました。鳥貴族の鶏肉は、すべて国産なので、今回の輸入肉の価格高騰の影響はそれほど大きくはないとのこと。しかし、生産者の実情を踏まえると、国産鶏肉も近々価格が上昇せざるを得ない状況と推測できる、と意見交換をしました。
鳥貴族は、この4月に商品の均一価格を327円から350円に値上げしています。原材料、流通コスト、人件費などの高騰が理由です。ですが、本質的な理由は、生産者を守り、従業員を守り、関わる人たちを守るための中長期的な経営戦略です。
生産者や流通、従業員に負荷が及ばないようにと、値上げに踏み切ったわけです。今回の値上げは、日本の食文化をアフターコロナのニューノーマルに対応するための施策と言えるでしょう。
紛争が長引いてしまっているため、値上がりの波は鶏肉だけでなく豚肉、牛肉にも及んでいます。日本の豚肉も牛肉も、ほとんどが輸入飼料に頼っているというのが大きな問題。トウモロコシは、鶏だけでなく、豚にも牛にも飼料としても使われています。そのため今後、国産の食肉すべての価格も上がると思われます。
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