ウクライナ戦争で日本の鶏肉が高くなるカラクリ 食肉価格上昇に対して日本が今できること

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そこで今こそ、生産効率のいい飼料用トウモロコシの生産を提案します。現在、日本各地に耕作放棄地が多くあります。これを子実トウモロコシの栽培に充てれば、土地の有効利用にもなります。また、その飼料を食べる牛や豚、鶏の排泄物を堆肥にして子実トウモロコシ栽培に利用すれば、理想的な食の循環も実現できるのです。

子実トウモロコシの栽培は、実は手間がかからないというメリットがあり、労働時間あたりの所得を主食米の栽培と比べると20倍も効率がよい、という農水省の試算があります。1時間当たりの所得で考えると、主食米が1時間1400円ですが、子実トウモロコシは、1時間2万9200円というから、これはもう国産に切り替えるタイミングがきている!! 

ただ、トウモロコシ生産には、大型の機械も必要なので、すぐに切り替えることは難しい。1農家だけでなく、自治体や企業単位で、大きな企画とすれば予算も確保でき実現可能です。今後、日本の宝でもある和牛を食べ続けることができるようにするためにも、国産の子実トウモロコシの生産を、国は本気で考えてほしいと思います。

輸入ばかりに頼るのはあまりにリスクが大きい

予測不可能な事態が起こる今のような時代を、“ブーカ(VUCA)の時代”と言うそうです。変動性(Volatility)、不確実性(Uncertainty)、複雑性(Complexity)、曖昧性(Ambiguity)――。ウクライナ紛争や新型の感染症、そして円安など、まさに変化が激しく先行き不透明なことが今起こっているのです。

島国である日本は、安いからと輸入にばかり頼っているのではあまりにもリスクが大きい。サステナブルな農業にするためにも、飼料も国産とすることは、この国を強くすることだと思います。農水省もここ数年、子実トウモロコシのための転作の助成や推進事業を積極的に行っています。

ウクライナ侵攻は、いまだ終わりが見えない状況で、さまざまなものが値上がりし、不安定な日々ですが、この世界的な危機を教訓とし、サステナブルな日本の食(農業)への準備をしていくことが今迫られているのです。

千葉 祐士 門崎熟成肉 格之進 代表

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ちば ますお / Masuo Chiba

1971年、岩手県一関市生まれ。1994年東北学院大学経済学部商学科卒業。1994年大倉工業入社、1999年より外食事業を展開し、五代格之進を開業。2004年丑舎格之進 川崎本店、2006年格之進TOKYO(練馬区桜台)開業。2008年10月に株式会社門崎を設立し、2010年格之進R(六本木)開業。2013年ミートレストラン格之進(一関)、焼肉のろし(岩手県陸前高田)、2014年肉屋格之進F(六本木アークヒルズサウスタワー)開業。2015年11月格之進Rt(代々木八幡)をオープン。現在は「門崎熟成肉」の牛肉販売、卸・食品加工、店舗運営、飲食店運営サポート事業、牛肉の啓蒙活動を行う。
 

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