医療費を1千万円減らす「口腔ケア」のすごい効果 歯周病で認知症、糖尿病、脳卒中等のリスク増大

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3番目の「歯を失うことによるタンパク質不足」について。歯が弱って噛むことができなくなった高齢者は特に、柔らかい食べ物を好むようになります。しかし、良質なタンパク源というのは、鶏胸肉や牛ステーキ、イワシの丸干しなど、基本的に固い食材に多いもの。つまり、固いものを噛みくだける健康な歯がないと、良質なタンバク質の摂取量が減ってしまうことにつながるのです。

固いものが噛めなくなると、その代わりに、やわらかい炭水化物ばかりになってしまう。そうなると、人は一気に弱ります。元気なお年寄りが、ステーキをモリモリ食べているのを見たことがあるでしょう。彼らは、良質なタンパク質を摂取しつつ咀嚼で脳に血液を送り込むことで、体と脳の健康をキープしているのです。

すでに厚生労働省と日本歯科医師会は1989年から「8020運動」を推進していることをご存じの方も多いと思います。

大人の歯は、全部で28本が基本です(他にも親知らずが4本ありますが、これは生えてこない人もいるので、基本数に含めません)。このうち少なくとも20本以上自分の歯があれば、 ほとんどの食べ物を噛みくだくことができ、 死ぬまでおいしく好きなものが食べられて、楽しく健康でいられる。そのような趣旨で始められた運動です。この運動が功を奏して、厚生労働省が発表した2016年調査では、80~84歳の「8020」達成者が51.2%となりました。

目標は「8020」を超えた「8028」

認知症専門医である私から見ても、この運動は素晴らしいと思います。ただ、個人的な感想を言わせていただくと、私がクリニックで患者さんたちの口の中を見た印象では、残った歯の数が20本というのは、かなりスカスカの状態です。 

認知症専門医が教える! 脳の老化を止めたければ 歯を守りなさい!
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20本ということは、すでに8本の歯が失われているわけです。例えば、あなたの上の前歯が4本、下の前歯が4本なくなっているところをイメージしてみてください。これって「うわぁ、かなりごっそり抜けてるなぁ」という感じではないでしょうか。

ですから、本気で脳の老化を防ぎたいなら、そして、全身疾患を予防したいなら、「8020」で満足せずに、もっと高いレベルを目指す必要があります。私が推奨したいのは、「8028」! つまり、「80歳で28本、すべての歯を残す!」という気持ちで、口腔ケアを行ってほしいのです。

ただ、日々の歯みがきやケアでは限界があります。年に1度の歯科検診だけに頼らず、3カ月に1度程度は歯科に通って歯石取りやプラーク除去などの定期的なメンテナンスを受けることをお勧めします。

いまや、「歯医者さんに通うのは治療のため」だけではありません。「国民皆歯科健診」の制度の導入からもわかるように、時代は治療歯科から予防歯科へと移り変わろうとしているのです。

長谷川 嘉哉 認知症専門医

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はせがわ よしや / Yoshiya Hasegawa

1966年、名古屋市生まれ。名古屋市立大学医学部卒業。医学博士、日本神経学会専門医、日本内科学会総合内科専門医、日本老年病学会専門医。祖父が認知症になった経験から医師の道を志す。病気だけでなく生活、家族も診るライフドクターとして活動し、医療、介護、社会保障サービスから民間保険の有効利用にまで及ぶ。在宅医療では開業以来、70,000件以上の訪問診療、1,000人以上の看取りを実践している。現在、医療法人ブレイングループ理事長として、在宅生活を医療・介護・福祉のあらゆる分野で支えるサービスを展開している。主な著書に、『親ゆびを刺激すると脳がたちまち若返りだす!』(サンマーク出版)、『認知症専門医が教える! 脳の老化を止めたければ歯を守りなさい!』、ベストセラーになった『ボケ日和』。また『マンガ ぼけ日和』矢部太郎著(すべて、かんき出版)の原案などもある。YouTube『長谷川嘉哉「ボケ日和 転ばぬ先の知恵」チャンネル』も。

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