「チョコレートかき氷」とは一体どんな物なのか Minimalが着目「リアルとデジタルの相互作用」

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同社は2019年7月、「より新しいチョコレート体験をお届けしたい」と、ガトーショコラ専門店のMinimal The Baking 代々木上原店を立ち上げた。同店の目玉は火入れ加減やチョコレートの味わいなどが異なる6種類のガトーショコラ。それらを少量ずつ味わえる「食べ比べセット」をイートイン限定で扱い始めたところ、SNSでの反響が高まり、来店客も増えたそうだ。

ガトーショコラの食べ比べセット。3種類とドリンクのセットは1200円だが、全6種類を食べ比べるセット(+600円)の人気が高いという(写真:Minimal)

「デジタルとリアルの相互作用に気づいた瞬間でした。2014年の開業以来、お客様とのリアルなコミュニケーションの中での販売を重視してきました。また正直、店頭で売り切れてしまいECをやっても販売できる商品がありませんでした。しかしこの経験をきっかけに、ウェブを使った戦略やECの必要性も強く感じるようになりました」(山下氏)

EC化に際していくつもの壁に直面

ここでカギとなったのが、「食べ比べ」という付加価値を打ち出したことだ。食べ比べは写真によって体験をわかりやすく他者に伝えられる。「食べてみたい」「面白そう」と思った人がSNSで写真を拡散し、実際に来店するようになる。

「対面で販売するだけがコミュニケーションではない。デジタルによって商圏を10km範囲からより広げていき、お客様ともっと距離を近づけることも可能だと考えました」と山下氏。

このようにウェブの力に気づきECにも力を入れようと考えていたのだが、その矢先、コロナ禍に突入する。店舗での売り上げはもちろん、売り上げの3割程度を占めていた製菓メーカー等へのB to Bも打撃を受けた。

ECの強化に着手していたことが幸いし、ECに舵を切るという決断を瞬時に行うことができた。しかし実行に移すのには大きなハードルがあったという。ECのシステムそのものはShopifyというECサイトのプラットフォームを活用したが、苦労したのは在庫管理や物流の仕組みづくりだった。商品が常温、冷蔵、冷凍と3温度帯にわたるほか、小ロットということもあり、倉庫もなかなか見つからなかったそうだ。

さらに苦労したのがスタッフのマインドだった。ものづくりからスタートした企業であり、人とリアルで接することに価値を感じてきたメンバーばかりだったからだ。

「社員には、雇用は守ると。リアルで行ってきたことを、デジタルで実践できるようにマインドを変えていこうと説明しました」(山下氏)

次ページ結果としてデジタル化に成功
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