「チョコレートかき氷」とは一体どんな物なのか Minimalが着目「リアルとデジタルの相互作用」
本来は反発し合う氷とチョコレートを橋渡しし、一体感を持たせる役割を務めているのが脇役達だ。
器にふんわりと盛られた氷の中心部にはチョコレートアイスクリームをしのばせてある。もちろん同社のチョコレートをベースに、卵や生クリームを使わず仕上げたさっぱりとしたアイスクリームだ。
周りを取り囲むのが、杏のコンポートと紅茶のジュレ。
そして最後に、紅茶でアクセントを加えた練乳をお好みで回しかける。
氷を覆うチョコレートシロップ自体にベリー類のようなフルーティーさがあり、これが杏の甘酸っぱさや紅茶の渋みと呼応しあうことにより、立体感のある味わいとなっている。
カカオ豆本来の果実のような味わいを十分に引き出すため、原料のカカオ豆は浅煎りに仕上げる。さらに冷たい氷と合わせても香りを感じられるよう、チョコレートは湯煎した後、急冷して香りを強めているのだそうだ。
余分なものを加えず、素材のおいしさで勝負してきたMinimalらしいチョコレートかき氷と言えるだろう。
「繁閑差という経営課題への対策」
チョコレートかき氷発売の理由をMinimal代表の山下貴嗣氏に聞くと、「繁閑差という経営課題への対策」という回答。チョコレートと言えばまずバレンタインデーが思い浮かぶが、同社でも11〜3月までの売り上げが年商の半分以上を占めるそうだ。そこで夏場の売り上げを引き上げ、夏ならではのチョコレートの新しい楽しみ方を提案すべく着想したのがかき氷だったという。
思いのほかひねりのない、直球な思いつきだ。しかし狙いは当たり、開店2時間ほどで完売する日もある。2019年の売り上げは前年比119%。パフェなどほかの商品の売り上げも上がったことに加え、夏でもチョコレートを楽しめるという認知が高まったことが大きな成果だったそうだ。
実はこうした施策の背景には、Bean to Barの専門店からの変身を図る同社の模索がある。
ここまで「チョコレート専門店」として紹介してきた同社だが、最近は「D2Cの成功例」としてもメディアに取り上げられることが多くなっている。D2CはDirect to Consumerの略で、メーカーなどが消費者と直接つながる手法のこと。商品とお金をやりとりするだけでなく、お客の情報や声などをメーカーが収集することにより、商品開発や宣伝、お客との関係維持に役立てる。
山下氏に聞くと、実のところ「D2Cとの自覚はなく進めてきた」という。ストイックなBean to Barであった同社がD2Cへと転身したのには、ある転機があった。そして結果的に、コロナ禍の打撃を乗り越えた後の伸展にも大いに役立った。
その転機とは何だったのだろうか。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら