シュンペーター伝 革新による経済発展の預言者の生涯 トーマス K.マクロウ著 八木紀一郎監訳/田村勝省訳 ~波乱万丈の人生を送った巨人の実像

20世紀を代表する三大経済学者の一人、ジョセフ・A・シュンペーターの決定的な伝記が現れた。
資本主義の原動力として「創造的破壊」を称揚したシュンペーターは、毎日、自分を厳しく評価していた。日記では0点から1点満点までで、自己の達成度を記録したという。他方で彼は、一流の演技力でもって会話や講演を楽しんだ。財務大臣としての横顔もある。だが財産は市況の暴落で失ってしまった。それでも派手な生活を好み、数々の女性たちに囲まれた。栄光と挫折、愛と孤独という、波乱万丈の人生を送った巨人の実像が、いま鮮やかによみがえる。
おそらくエコノミストやビジネスパーソンに必要な人生訓は、この一冊に詰まっているのではないか。それほどまでに感銘を受ける。シュンペーター本人、あるいは親しかった人たちが残した日記や手紙から、本書はさまざまな名言を抜粋する。人生を深く洞察するための、言葉の宝庫である。
シュンペーターは悲劇の英雄であった。43歳にして母と妻とその新生児を同時に失い、絶望の淵に立たされた。「私はこれからの歳月のことを思うと身震いし、私はお前(妻)のいない人生に戦慄する」と彼は記している。「すべてが私の働く能力次第である。そうであれば、仮に私の私生活は終わったとしても、動力源は稼動し続けるだろう」。