シュンペーター伝 革新による経済発展の預言者の生涯 トーマス K.マクロウ著 八木紀一郎監訳/田村勝省訳 ~波乱万丈の人生を送った巨人の実像


 新資料に基づいて書かれた本書は、ヘイグリー経営史最優秀出版賞、シュペングラー経済学史賞、国際シュンペーター学会賞、等々の賞を受賞。前作でピュリッツァー賞を授与されたハーバード大学教授の手による、渾身の作である。

シュンペーターは逆説家であり、皮肉屋ともいわれた。たとえば彼は、創造的破壊の精神を鼓舞する一方で、実際には「保守主義」の立場をとっていた。創造的破壊は、大切な人間的価値を低下させることをよく知っていた。彼は、古きよき旧世界の芸術的達成を維持するために、民衆の革新勢力を抑えるべきだとも考えた。

そんな保守主義者のシュンペーターが、名著『資本主義・社会主義・民主主義』では、社会主義への移行を必然的であると主張したのは、人を驚かせようとする彼の習癖ゆえだったのであろうか。

弟子のポール・サミュエルソンは、師の性格に「大切にされてきた一人っ子に典型的」な不安定さを見抜いている。シュンペーターは、疎外された異邦人としての役割を演じていたのだと。だがたんなる道化師と呼ぶにはあまりに巨人すぎる。巨人は完璧な仕事の理念に突き動かされる。その執念に学びたい。

Thomas K. McCraw
米ハーバード大学経営学大学院のストラウス記念・企業史名誉教授。長年、ハーバード・ビジネススクール教授を務めた。本書でヘイグリー経営史最優秀出版賞、国際シュンペーター学会賞ほかを受賞。ピュリッツァー賞(歴史部門)の受賞歴もある。

一灯舎 3990円 609ページ

  

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