なお、給与以外にも重要な点がいくつかある。特に日本企業の人事システムを相当変えていかないと、中国人は企業に定着しないだろう。これについては、別の回で再び検討することとしたい。
単純労働者でなく専門家を求めるべきだ
では、中国の労働者をどのように受け入れるべきだろうか。まず、単純労働と知識労働を区別する必要がある。
現在、中国では人手不足が顕在化しつつある。ただし、これは沿海部での単純労働者の問題だ。経済危機後の景気刺激が内陸部の公共事業によって行われたため、沿海部での労働者が不足しているのである。
その半面で、大学卒業者では失業が多い。これについては、すでに第53回で述べた。失業率が30%を超えているとも言われるほどだ。
中国で労働力を必要としているのは、製造業、しかも労働集約型の軽工業である。中国経
済は、まだ大学卒の知識労働者を大量に必要とするようにはなっていない。したがって、労働力需給の深刻なミスマッチが生じているのだ。
他方で日本では、経済規模に比べてプロフェッショナルと呼べるような専門家の数が少ない。とりわけ英語力が低い。日本企業が事業のグローバル展開をできない大きな原因は、国際的な場で活躍できる人材が少ないことである。
日本の学生の英語力が低いことはさまざまな指標で見ることができるが、一流大学の学生数と留学生数を比較してみてもわかる。第52回で見たように、一流大学の学生数では日本と中国はほぼ同程度だ。