(第54回)将来は難しくなる知識労働者の受け入れ

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 ところが、第51回に示したスタンフォード大学の留学生で見ると、中国人は日本人の6倍程度なのである。これは、日本人は知的能力が高くても英語力が低いことの反映と解釈することができる。

以上のことは、日本が中国から受け入れるべきは、単純労働者ではなく、専門家であるべきことを意味している。

受け入れ態勢の面から見ても、それが適切だ。大量の単純労働者を受け入れようとすると、さまざまな問題が発生する。まず言葉の問題があるため、地域住民との間で摩擦が生じる可能性がある。また、所得が低いため、高物価の日本での生活は難しい。

日本はこれまで大量の単純労働者を受け入れた経験がない。80年代後半にバングラディッシュの労働者が建設現場などで増えたが、一時的なものだった。また、自動車関連産業での日系ブラジル人も、工場のある町だけで吸収した。

第53回で見たように、日本の労働者人口中の外国人労働者の比率は、異常に低い。大量の単純労働者を受け入れる社会的な基盤がないのである。

多民族国家アメリカでは、この問題は、長い歴史の中で対処されてきた。最近では、メキシコから合法的・非合法的に流入する労働者が極めて多い(前記世銀の資料では、合法的移民だけで年間1160万人もいる)が、居住地域が自然発生的に分離しているために、大きな問題を引き起こさずにいる(そうであっても、潜在的に問題を抱えていることは事実だ)。

それに対して、知識労働者は少数で済む。日本の地域社会にも大きなショックを与えないで済むし、所得が高いから高物価社会でも生活できる。彼らは、日本の企業や地域社会に、あまり大きな摩擦を起こすことなく溶け込むことができるだろう。

では、どの分野での専門家が必要だろうか? それについて次回に検討することとしたい。


野口悠紀雄(のぐち・ゆきお)
早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授■1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省(現財務省)入省。72年米イェール大学経済学博士号取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授などを経て、2005年4月より現職。専攻はファイナンス理論、日本経済論。著書は『金融危機の本質は何か』、『「超」整理法』、『1940体制』など多数。(写真:尾形文繁)


(週刊東洋経済2011年3月5日号)
※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。

photo:Gisling Creative Commons 3.0 BY-SA
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