日中所得格差が将来は縮まる
人材の受け入れが将来難しくなる第2の要因は、中国の所得水準の上昇だ。
第51回に述べたように、20年後には、中国の実質GDPは日本の5倍程度になる可能性がある。そうなれば、中国の1人当たりGDPは日本の半分程度にまで上昇するだろう。
中国の生産年齢人口は今後減るので、賃金水準の上昇にも拍車がかかる。さらに産業構造の高度化に伴って、労働力需要が単純労働から専門的労働にシフトするから、知識労働者の賃金はもっと上昇するだろう。20年後、日本企業の幹部候補生となりうる人材は、日本企業が払えないほどの高い給与を得ているだろう。
しかも中国人を受け入れる点で、日本は独占的地位を占めているわけではない。世界銀行の資料(Migration and Remittances Factbook 2011)によると、10年において中国出身の移民830万人がどこの国・地域に住んでいるかのデータは、香港220万人、アメリカ170万人で、日本は第3位である。また、日本の全世界からの移民受け入れ総数は216万人しかない(ただし、国別では中国からの受け入れが最も多い)。
現在でもこのような状態なのだ。今後、日本経済の相対的な地位が低下すれば、日本で仕事をする魅力も低下するだろう。とりわけ知識労働者について、その傾向が強いと考えられる。
以上を考えると、有能な中国人を日本企業が雇える期間は、それほど長くないことがわかる。たぶん今後10年間程度なのではないだろうか。この期間にどれだけのことをなしうるかが重要なのである。