ドイツ自動車大手のフォルクスワーゲン(VW)グループは6月17日、中国事業のマネジメント体制を8月1日付で変更すると発表した。と同時に、現地の責任者により大きな裁量権を付与するとしている。
中国事業の総責任者には、グループ取締役会メンバーのラルフ・ブランドシュテッター氏が就任する。また、中国事業のCTO(最高技術責任者)にマーカス・ハフケマイヤー氏、中国のVWブランドの乗用車部門CEO(最高経営責任者)にステファン・メカ氏の起用がアナウンスされた。
VWは体制変更の狙いについて、中国統括会社(VW中国)の取締役会がグループ傘下の各ブランドおよび事業会社を総合的に管理できるようにすることで、意思決定の効率性や柔軟性の向上を図ると説明している。
注目されるのは、VWが中国市場のニーズによりフィットした製品を投入するため、現地での研究開発に地域内のリソースを集中させるとした点だ。VW中国はかねて、通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)との協業に関心を示してきた。市場関係者の間には「VW中国がファーウェイの自動運転技術開発部門の買収を検討している」との噂も流れている。
テスラやBYDの後塵を拝す
中国事業のCTOに就任予定のハフケマイヤー氏は、実はファーウェイとの関わりが深い。2020年からファーウェイの自動車関連事業部門の戦略顧問を務めていたのだ。財新記者はVW中国とファーウェイに対し、協業の進捗状況についてコメントを求めたが、回答は得られなかった。
VWが中国事業のさらなる現地化を急ぐ背景には、同社が直面している厳しい現実がある。中国市場でのグループ全体の販売台数は、2021年に前年比14.1%減少。その主因は(高級車ブランドのアウディに比べて)VWブランドの大衆車の販売が低迷したことだ。2022年はさらに状況が悪化し、1~3月期の販売台数は55万7900台と前年同期比23.8%減少した。
中国の自動車市場では、2021年後半からEV(電気自動車)の人気が急速に高まる一方、エンジン車の販売は減少が続いている。VWは世界の自動車大手のなかで最もEVシフトに積極的なことで知られるが、中国市場においては、そのイメージと現実の間に大きな落差がある。
VWは主力EVの「IDシリーズ」を中国市場に2021年に投入し、2022年1~3月期の販売実績は2万7100台だった。だが、同じ期間にアメリカのテスラは18万台以上、中国の比亜迪(BYD)は14万台以上を販売しており、大きく水を空けられているのが実態だ。
(財新記者:安麗敏)
※原文の配信は6月18日
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