中国各地の電力市場で、「ゾンビ化」した新興電力販売会社(新電力)の強制退場が進められている。
広東電力交易センター(広東省の電力取引所)は6月15日、266社の新電力に対して電力取引市場からの強制退場手続きを開始したと発表した。広東省には2021年末時点で507社の電力販売会社があり、単純計算ではその半数以上が淘汰されることになる。
背景には、中国政府のマクロ経済政策を統括する国家発展改革委員会が2021年11月に出した通達がある。そこでは電力販売会社の強制退場の基準が明確化され、電力販売業務を3年連続で行わなかったり、新電力としての登録基準を満たせなかったり、電力取引の規則に違反したりした場合には、強制退場の対象になると定められた。
この通達に基づくゾンビ新電力の大量淘汰が実行に移され、電力取引市場への新規参入のハードルが引き上げられつつあるのだ。
燃料価格高騰で「逆ザヤ」に
中国政府は2015年、電力業界の新たな構造改革に着手。そこでは電力の(発電、送電、小売りのうち)小売り市場の規制緩和が先行し、異業種を含むさまざまな資本が参入できるようになった。小売り市場での競争を促進し、需要家により多くの選択肢を与えることで、電力販売会社のサービスの質や需要家のエネルギー消費効率を高めるのが狙いだ。
この規制緩和が呼び水になり、中国各地に多数の新電力が誕生した。ところが、その後の展開は政府の思惑どおりには進まなかった。大部分の新電力の経営は、発電会社から安く仕入れた電力に利ザヤを乗せて需要家に販売する単純な「サヤ抜き商売」に終始したからだ。
そして、2021年から(燃料価格の高騰によって)電力の卸売価格と小売価格の差が縮小すると、多くの新電力が「逆ザヤ」に直面して赤字に転落した。こうして増加したゾンビ新電力が、今まさに強制退場を迫られているのだ。
「単純なサヤ抜き商売への依存は、電力販売会社の本来あるべき姿ではない。新電力は効率的な電力利用のノウハウや、卸売り段階と小売り段階での戦略的な取り引きなど、付加価値が高いサービスの提供能力を身につけるべきだ」。電力業界のある関係者は、新電力の実態についてそう苦言を呈した。
(財新記者:陳雪婉)
※原文の配信は6月17日
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