「わが社の5月は帳簿上、600万元(約1億300万円)を超す赤字を計上した。そのほかの経費も加味すれば、実質的な赤字額は1000万元(約1億7000万円)を超える。これは、昨年1年間で稼いだ利益の4分の1に相当する」。6月15日、中国広東省のある電力販売会社の責任者は財新記者に、最近の経営実態についてそう明かした。
広東省では今年5月、スポット電力市場(卸売電力市場)の取引の精算に、新制度をテスト導入した。ところが、(少雨による水力発電所の出力低下などの影響で)電力供給が逼迫し、スポット電力市場の相場が急上昇。電力販売会社の仕入れ価格は大幅に値上がりした。
5月のスポット電力市場において、発電会社の平均卸売価格は1kWh(キロワット時)当たり0.51元(約8.8円)と、政府が定める石炭火力発電の基準価格を10%上回った。一方で、電力販売会社の需要家向け平均小売価格は1kWh当たり0.438元(約7.5円)と、政府の基準価格よりも5.4%低かった。
広東電力交易センターの説明によると、電力販売会社の大半は需要家との契約で政府の基準価格より低い価格を保証している。そのため相場急騰のリスクを効果的に吸収する方法がないという。実際に、大部分の電力販売会社では、電力の仕入れ価格が販売価格を上回る「逆ざや」の状況に陥ってしまった。
黒字を計上したのはわずか25社
同センターが6月12日に公表したデータによると、スポット電力の卸売り価格と小売価格の逆転現象により、5月は広東省の電力販売会社161社のうち、8割超に当たる136社が合計5億1600万元(約89億円)の赤字に陥り、黒字を計上したのはわずかに25社だった。また、これら25社の利益は合計で700万元(約1億2026万円)にすぎなかった。
電力供給の逼迫と、大部分の電力販売会社の赤字転落を受け、広東省政府は6月に、電力スポット市場の取引を一時停止した。
そんななか、財新記者の取材に対して電力販売会社の関係者は次のように語った。
「5月はスポット電力相場の値上がりで、電力販売会社は深刻な損失を被った。それでもスポット市場は閉鎖しないでほしい。電力の需給バランスが緩和されれば相場は下がり、また(電力販売会社が)儲ける余地が出てくる。市場を閉鎖したままでは、今回の赤字を取り戻せない」
(財新記者:陳雪婉)
※原文の配信は6月16日
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