日本並み悪環境なのにイスラエル起業世界一の訳 条件が違いすぎるアメリカより学べることは多い

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なぜ日本では起業家精神が生まれにくいのか。GEMによる、起業を促す社会制度・風土の整備状況(Entrepreneurial Framework Conditions、EFCs)調査(表1)を見てみよう。

表1 起業を促す社会制度・風土の整備状況(EFCs)質問項目

出所:Global Entrepreneurship Monitor 2021/2022 Global Report, P86を基に筆者作成

これら各項目における日本の得点状況(図3の青のレーダーチャート)と先進国の平均(黄色のレーダーチャート)の比較から、日本における起業の最も大きな足かせは「I.社会的・文化的規範(Social and Cultural Norms)」 だとわかる。

図3 日本における起業促進の社会制度・風土

出所:Global Entrepreneurship Monitor 2021/2022 Global Report, P134

ただし、悲観することばかりでもない。いくつかの項目では先進国の平均並みの点数を取っているし、「G1.新規参入の容易さ(市場)(Ease of Entry: Market Dynamics)」では先進国平均を大きく上回る。

では「I.社会的・文化的規範」を改善するには、どうすればいいのか。日本のよさは残しつつ、日本の弱みを克服するヒント、しかも「今日から」「各家庭や個人で始められる」ヒントがイスラエルの家庭教育にある。

イスラエルも日本と並んで3項目で最下位

実は、世界一の起業大国イスラエルは、政府の支援も大学での起業教育も十分でなく、新規参入への政府の規制や市場の評価もシビアという、厳しい起業環境にある(図4)。

図4 イスラエルにおける起業促進の社会制度・風土

出所:Global Entrepreneurship Monitor 2021/2022 Global Report, P128

EFCs調査の13項目において、日本は①社会的・文化的規範、②学校での起業家教育、③商業的・専門的インフラの3項目で先進国最下位だが、イスラエルも同じく、「B1.政府の政策(支援と関与)(Government Policy:Support and Relevance)」「C.政府の起業プログラム(Government Entrepreneurial Programs)」「G2.新規参入の容易さ(規制)(Ease of Entry:Burdens and Regulation)」の3項目で最下位であり、最下位の数でも日本と並んで総合最下位である。そうした不利を克服したイスラエル国民の起業家精神の秘訣はどこにあるのか。

それは、日本において大きな足かせになっている「I.社会的・文化的規範」が突出しているということだ。イスラエルの家庭は、日常の問題を経営教育の場として捉えており、「起業や企業経営が身近に感じられる」という社会的・文化的な規範を持っているのである。

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