投資家が列をなす「空き家再生集団」のすごい手腕 日本全国で1570軒の空き家を生き返らせた

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「金石は全体で2000世帯くらいある広い地域で10軒程度再生してもたかが知れています。でも、改修中などに『誰か住んでくれるのね、よかったわ』『ありがとうな』と声を掛けられることも増え、ウチの家を見てほしいという相談も。ここでも貸せるという意識は確実に醸成されてきています。今後はオフィスの空いているスペースを利用、地域に貢献できる場やすでに何社か登録予定のあるサテライトオフィスなどを作り、より受け入れられるような方法も考えています」

今夏からは地元の人を採用する予定で念願だった雇用を生むこともできそうである。また、地域に子どもを増やすことを考えると賃貸ではなく、分譲も必要と考え、こまちなみ保存区域メインストリートの古家を改修、初の分譲を行うことも計画している。

首都圏以外で物件持ちたいという人も

高齢者が多く、これまで変化のなかった地域だけに軋轢がないわけではないが、最近は自宅兼用の店舗を郊外でやりたいという声も増えている。また、首都圏などで買うよりも利回りがいいこと、全国に不動産を所有することで災害時などのリスクを分散したいと考える人がいることなどから、金沢で投資物件を買いたいと考える人も多い。買う、借りる、いずれのニーズもあるのである。

金沢市金石、築150年ほどの古家を再生した全古協、工藤氏のオフィス。工藤氏はこの1年で金石地域の空き家を11軒再生へ踏み出させることに成功した(筆者撮影)

現在の金石では蔵を利用したカフェがあるくらいで、飲食店などはほとんどないが、店ができてくれば町は変わる。その日に向けて工藤氏は鋭意根回し中だという。

町工場の経営危機からの新規事業模索が大きく発展し、空き家を処分できる所有者や、空き家再生が仕事になる工務店、購入した空き家で収益を上げられる投資家、これまで少なかった一戸建てを借りられる入居者と四方良しの事業となった全古協。今後は空き家解消によって地域までが恩恵に預かれるかもしれない仕組みになったというわけである。

ただ1点、問題があるとすれば全古協のホームページがいささか怪しく見えること。関西のノリなのだろうが、情報商材を売っている会社のようにも見え、私も最初は大丈夫かと疑った。もう少し、なんとかならないのだろうか(笑)。

中川 寛子 東京情報堂代表

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なかがわ ひろこ / Hiroko Nakagawa

住まいと街の解説者。(株)東京情報堂代表取締役。オールアバウト「住みやすい街選び(首都圏)」ガイド。30年以上不動産を中心にした編集業務に携わり、近年は地盤、行政サービスその他街の住み心地をテーマにした取材、原稿が多い。主な著書に『「この街」に住んではいけない!』(マガジンハウス)、『解決!空き家問題』(ちくま新書)など。日本地理学会、日本地形学連合、東京スリバチ学会各会員。

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