投資家が列をなす「空き家再生集団」のすごい手腕 日本全国で1570軒の空き家を生き返らせた
それを検証するため、大熊氏は自ら戸建てを買って賃貸オーナーとなった。その経験からわかったことは、空き家を賃貸住宅として再生して使われるようにするためには入居者に選ばれる、でも多額になりすぎない改修が大事ということ。収支が合わなければ投資する人が出てこないからだ。また、不動産投資家には横のつながりがなく、孤独であることもわかった。
その結果が現在の全古協の仕組みだ。いくつか、これまでの空き家再生と異なる点がある。
まず、大きいのは再生の主体になっているのが小規模な工務店であるという点。これまでは建築家、不動産会社が中心だったが、そこには問題があった。
建築家は、建物はわかるものの、収支を考えるのは業務外と考える人もいるようで、しばしば採算度外視の改修をするのを見てきた。収支を考えない改修ではいくらすばらしい物件ができたとしても、家賃が高くなりすぎて入居者が決まらない、あるいは家賃を下げざるをえないことで投資を回収できない結果となり、1軒目は再生できたとしても次には続かない。
一方、不動産会社は基本、貸す、売るが業務のため、建物がわからない。残置物であふれ、老朽化した住宅を改修して賃貸住宅化するという発想もノウハウもない会社がほとんどなのだ。また、低額な空き家を仲介したところで受け取れる仲介手数料は低く、たいした利益にならないから面倒と考えている会社も多い。売却を頼まれた空き家情報はオフィスの引き出しの奥深くにしまわれたまま、という例が少なくないのだ。
投資家が損をしない改修のノウハウを伝授
そこで全古協では、戦力としている工務店に不動産取引の知識や地域の相場を学ばせるだけでなく、投資家が損をしない、入居者には喜ばれる改修のノウハウを伝授する。工務店には建築家同様、採算度外視の作業をしたがる職人が少なくないが、その意識を変革することで投資家に喜ばれる賃貸住宅化を可能にするのである。
全古協が手がける案件では、工務店には工事費が支払われ、不動産会社には仲介手数料が支払われる。不動産会社は売り手、買い手双方から手数料を受け取れることもあり、手数料が低額だとしても損はしない。賃貸住宅化した物件を仲介・管理することになればさらにお金が入る可能性がある。そう聞いて塩漬けにしていた情報を出してくる不動産会社が相次ぐのは当然だろう。
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