任天堂創業家の買収案、東洋建設「3つの反論」 株式公開買い付けの攻防戦は「第2幕」に突入へ

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ーー2021年1月の段階では、東洋建設も前田建設の動きを相当に警戒していたのではないですか?そのあたりの解釈・見方の違いが、現在のYFOと東洋建設の意見の食い違いになっているように思います。

当時は村上世彰氏の流れをくむファンドが当社株を5%超保有していた。そのアクティビストの動きを気にしていたこともあり、「経営統合についてしっかり検討する時間をほしい」と言って、HDへの参加をいったん見送った。

【2022年6月23日9時08分追記】初出時の一部表記を上記のように修正いたします。

前田建設への警戒感というよりは、われわれは社内ですごく丁寧に議論をして意思決定をしていく社風がある。

経営統合後のホールディングスのあり方について、どういう体制でやるのか、資金の管理体制はどうするのか、そういったものをしっかりと確認したうえで統合に踏み切りたいとの考えがあった。前田建設の(意思決定の)スピード感についていけなかった面もある。

企業対企業の話なので、警戒心がゼロかというと、そうではなかったのも事実。ただ、2021年10月にインフロニアHDが発足して、そのあとの経営体制を見てきた。われわれが「こういうふうにするべきだよね」と言っていたような内容が実現されているのを確認できたので、今回合流することを決めた。このあたりの流れは、非常にスムーズだった。

本当の話し合いはできていない

ーー株主総会後へ、東洋建設は次の手をどう考えていますか?

当社が要求している要望事項(成長につながる経営方針や戦略の提示)について、YFOが対応していただけるようなステージが整えば、もう少し踏み込んだ話をできるのかなという感じだ。

お互いに真摯な対応をすると言っているものの、まだ本当の話し合いのステージに上がれていない。われわれは彼らの提案にノーと言っているわけではなくて、交渉をスタートするにあたっての環境をつくりましょう、との姿勢だ。

先ほど申し上げたように、ゴーイング・コンサーンの観点、買収価格1000円の算出根拠、インサイダーの疑念などについてきちんと情報(説明)をいただいてから、次の議論の場に移りたい。

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任天堂創業家VS東洋建設、「TOB攻防戦」の舞台裏
中堅ゼネコンTOBに介入、「任天堂創業家」の正体
梅咲 恵司 東洋経済 記者

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うめさき けいじ / Keiji Umesaki

ゼネコン・建設業界を担当。過去に小売り、不動産、精密業界などを担当。『週刊東洋経済』臨時増刊号「名古屋臨増2017年版」編集長。著書に『百貨店・デパート興亡史』(イースト・プレス)。

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