任天堂創業家の買収案、東洋建設「3つの反論」 株式公開買い付けの攻防戦は「第2幕」に突入へ
建設業界は全般にPBRが低く、当社もずっと1.0倍に満たない0.8倍の水準のところで推移してきた。2021年3月期は過去最高の純利益を計上したが、それでも当社の株価は500円~600円という水準で推移していた。
1株1000円となると、その倍の価格だ。事業量をどれだけ増やして、利益をどう増やしていくのか、YFOはそれなりの戦略、アイデアをお持ちなのかなと考えていたが、具体的な話はいまだに提示していただいていない。
5月に、総136ページに及ぶ「企業価値向上策(案)」という資料を受け取った。ただ、これはDXの内容が中心であって、われわれが一番ポイントとしている、これまでやってきた事業(建設請負事業)をいかに成長させていくのかという点については、特段の意見やアドバイスがない。
インサイダー問題の懸念あり
ーーインフロニアHD傘下でなくても、「東洋建設は独立経営でやっていける」というのがYFOの主張です。
買収提案に対する疑問の2点目は、そのゴーイング・コンサーン(継続企業の前提)に関する部分だ。
東洋建設は港湾工事を中心とするいわゆるマリコンのため、全体の事業構成の中で公共工事のほうが民間工事よりも多い。土木の公共工事を主体とする経営状況であることを考えると、YFOを経営パートナーとした場合、これまでと同じように受注機会を得られるかどうか不安になる。
一方で、これまで前田建設工業(インフロニアHD傘下)とは約20年間にわたり、資本業務提携を続けてきた。共同受注、共同購買だけでなく、技術研究も一緒に取り組んできた。
インフロニアグループから離れた場合、このシナジーがなくなる点もやはり大きなポイントだ。独立して経営していくのは、ディスシナジーになる側面もある。フラットに、あらゆる可能性について検討していきたい。
ーー2021年1月に、東洋建設は前田建設などグループ会社との経営統合について検討していました。東洋建設はその際に、シンガポール籍のファンド「アスリード・キャピタル」とアドバイザリー契約を結んでいたが、アスリード側の担当者として、現YFO最高投資責任者の村上皓亮氏が検討メンバーに入っていました。
最後の疑問が、そのインサイダー問題に関する点だ。
村上さんの立場ならば、少なくとも一般の株主の方にはわからない情報を、当時は持っておられた。われわれは「情報の非対称性」と表現しているが、一般の株主が知りえないことを知って株を買われたということについては、これは法的な問題ではなくて、倫理問題として疑念を持たざるを得ない。
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