「魚が寿司になるまで」を真剣に解く職人の正体 「命を食べている事をたまに思い出して欲しい」

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「すし作家」の岡田大介さんに話を聞きました(撮影:今井康一)
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海で釣られた生きものが捌かれ、お寿司になるまでの過程を、写真とシンプルな文でつづった絵本、『おすしやさんにいらっしゃい! 生きものが食べものになるまで』。2022年「第68回 青少年読書感想文全国コンクール」小学校低学年の部(1、2年生)の課題図書に選出されるなど、注目を集めている。

子どもたちからは「魚に触れたくなった」「捌いてみたい」などの声が続々と届き、大人からも「生き物の尊さを実感した」「いただきます、の意味を改めて考えた」といった声が聞こえてくる。

第69回産経児童出版文化賞JR賞、第27回日本絵本賞を受賞(画像:『おすしやさんにいらっしゃい! 生きものが食べものになるまで』)

作者は「すし作家」の岡田大介さん(43)だ。神田川のほとりの江戸川橋に寿司店「酢飯屋」を構える岡田さん。白い割烹着を着た柔和な笑顔の奥には、食材について学びを絶やさぬこだわりの寿司職人と、表現者としての両面の顔を併せ持つ。

現在は「生きものが食べものになるまで」を伝える食育イベントなどに奔走。店の予約は受け付けず、年に数回だけ自らが釣った魚のみを寿司として握るというこだわりを持つ。

なぜ岡田さんは寿司職人の仕事にとどまらず、「すし作家」となったのか。その裏には自身の過去も関係していた。しなやかに活動の場を広げる岡田さんの秘密に迫る。

母親の急死をきっかけに、食の道へ

その日は突然だった。当時、18歳で大学浪人中だった岡田さんのもとに、“母親の死”という受け入れがたい知らせが届いた。

「医療ミスでした。あまりに突然母が亡くなってしまって。3歳年がはなれた妹と、さらに9歳はなれた弟がいますし、父親もぼくも食事が作れなかったので、まずご飯をどうしようって……」

大切な人が医療ミスでなくなったという事実を、家族が納得できるようになるまで、しばらく時間はかかった。
しかし、家族にとっては、まず日々の食事が緊急の課題だった。食事は出来合いの惣菜を買ってくるか、外食がほどんどになった。

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