「魚が寿司になるまで」を真剣に解く職人の正体 「命を食べている事をたまに思い出して欲しい」

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(撮影:今井康一)

難しい説明は一切ない。それでも、こんなこと知らなかった!と大人も一緒に夢中になる内容だ。絵本の最後には岡田さんが伝えたかったメッセージがある。

「生きものは 食べものになって、きみたちの からだの いちぶになる。わたしたちは たくさんの いのちで できているんだ。」

(画像:『おすしやさんにいらっしゃい! 生きものが食べものになるまで』)

食べものを入り口に伝えたいこと

魚を釣るだけでなく、ダイバーとして海にもぐる事もある岡田さん。海を見つめる中で課題に感じることの一つが海藻の問題だという。

「いろんな海で潜っていますが、潜れば潜るほど海藻がなくなっています。今、ほとんど着目されていないのが不思議なくらい深刻ですね。これは研究者や業界の方々も強い危機感をもっているのですが、今後天然昆布が絶滅する可能性もあると言われているんです」

養殖昆布も作られているが、天然ものと比較すると、味の出方がまったく違う。今後、スーパーで昆布が手に入りにくくなったり、高額になる可能性もあるという。昆布だけでなく、その他の海藻類も、魚が卵を産み繁殖するのに欠かせない場所だ。

海の生きものは無限ではない。寿司を入り口に、魚、そして海へと目を向けてほしいという岡田さんの気持ちは強い。

『おすしやさんにいらっしゃい! 生きものが食べものになるまで』(岩崎書店)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

「私たちが食べるものは、生きものの生態系や環境に必ず影響します。命を食べていることをたまに思い出してほしいなと。それを当たり前にしていかないと、環境も壊れてしまいますよね」

かつて9歳だった岡田さんの弟は、岡田さんと同じく寿司職人となり、3人の子どもの父親でもある。岡田さん自身も2児の父親だ。

「『おすしやさんにいらっしゃい!生きものが食べものになるまで』に書かれたことを、目の前で実際にやってみたい、食べてみたい、そういう子どもたちや親御さんは多いです。寿司職人として、寿司、魚や海に関することは何でも挑戦していきたいですね」

寿司職人として、岡田さんが次世代に伝えられることは、きっと海のように多様で広いだろう。

柳澤 聖子 編集者/ライター

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やなぎさわ せいこ / Seiko Yanagisawa

1979年生まれ、愛知県出身。大阪大学大学院理学研究科宇宙地球科学専攻修了。約16年間、ベネッセコーポレーションにて理科・自然科学系の教材を企画開発。その後、独立しフリーランスの編集者兼ライターに。子育て、家族、働き方、子どものSTEM教育などを中心に執筆活動をおこなう。2児の母。

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