「魚が寿司になるまで」を真剣に解く職人の正体 「命を食べている事をたまに思い出して欲しい」

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さまざまなタイプの寿司職人がいる中で、岡田さんは、とりわけコミュニケーションを大事にする。お客さんと会話を交わしながら、仕入れた魚や食材に興味を持ってもらえるような情報を工夫して伝える。全部で15種類くらいの寿司のにぎりを2、3時間ほどかけて丁寧に出した。

食べ終わったお客さんは「ごちそうさま、美味しかったです」だけではなく、「勉強になりました!」と言ってくれた。舌で感じるだけでなく、「頭や心で知って食べた方が、もっと美味しい」と感じるお客さんに喜ばれる店を心がけた。

そうやって日々、食材の由来や、魚の部位の説明などをするうちに、大きな気づきがあった。

「酢飯屋」の店内。のれんや食器など店内にあるものは”一流のモノ”にこだわっている(撮影:今井康一)

寿司一貫は「命の塊」

「あるとき、この寿司一貫は、すべて生きものでできている、と気づいた瞬間があったんです。魚はもちろん、お米も調味料の醤油も、もとは大豆や麹菌で生きている。

寿司になる前は生きていましたし、寿司になっても生きているものはあります。ぼくは相当な命を一貫のにぎり寿司として出している。その「命の塊」をただパクッと食べて、おしまいにするのはもったいないと思ったんです」

毎回、命の事を考えながら食べていては、疲れてしまうかもしれない。でも店に来てくれたときぐらいは考えてもらえたらと、その気づきを伝えるようになった。寿司職人が真面目に伝えると、大人には響くという手応えがあった。

しかし、子どもに伝えてみても、「ふーん」で終わってしまう。どうしたら、子どもたちに届けることができるか。そう考えるうちに、写真絵本にして伝えるというアイデアを思いついた。

(画像:『おすしやさんにいらっしゃい! 生きものが食べものになるまで』)

『おすしやさんにいらっしゃい!生きものが食べものになるまで』はまず、キンメダイ、穴子やイカなど生きものを海で釣るところからはじまる。そこから、魚の部位を観察し、鱗をおとし、魚を捌く工程を知ることができる。魚が海の中で食べていた小魚が胃袋から出てきたり、排泄物なども確認する。自然と食べものがこの瞬間まで生きていたのだ、と実感することができる。

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