値上げでも客が離れない主要企業の動向総ざらい 外食、食品、電力、住宅、日用品等の状況を確認

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値上げでも客数が落ちず、株価が上昇する企業も(撮影:今祥雄)
日本銀行の黒田東彦総裁は6月6日の講演で、「家計の値上げ許容度も高まってきている」と述べたところ批判が噴出。後日になって撤回したが、実際のところはどうなのか。編集部が各業界の担当記者に聞き取りをしたところ、一部の業界や企業は、値上げでも客は離れず、2022年度も好調な業績を上げる見通しである一方、原材料高を販売価格に転嫁しきれず業績が落ち込む企業があるなど、まだら模様であることがわかった。

 

編集部:新型コロナの感染拡大で大きな影響を受けた外食業界の状況はどうか。

外食担当:これまでは、低価格商品を扱う業態を中心に値上げをすると客数の減少が長期化するケースが少なくなかった。しかし、数多くの企業が値上げに踏み切る中、足元はそのトレンドが大きく変わりつつある。

日本マクドナルドホールディングスは、今年3月14日、一部品目で店頭価格(税込み)を10~20円値上げした(※注:「ビッグマック」、「マックフライポテト」、「ハッピーセット」など全体の約8割の品目については変更なし)。値上げ翌月の4月の既存店の客数は、前年同月比3.9%増加。5月も同4.8%増と悪影響は出ていない。客単価に関しても4月は前年同月比7.1%増、5月は同0.3%増と好調に推移している。

牛丼大手チェーンも状況は似ている。吉野家ホールディングスは「吉野家」で昨年10月、牛丼並盛を税込み387円から426円に改定するなど値上げした。それでも翌月以降の既存店売上高は前年同月比8.7%増、7.4%増、4.0%増、6.1%増、11.9%増、11.6%増、9.8%増と順調にきている。昨年コロナ禍で落ち込んだところから反動で増加したという事情もあるが、価格改定もプラスに作用している。

牛肉は当面高値で推移する

ゼンショーホールディングスが展開する「すき家」も、昨年12月、牛丼並盛を税込み350円から400円に改定するなど値上げしたが、翌1月以降の既存店売上高は前年同月比10.9%増、11.4%増、11.4%増、8.3%増、6.3%増で推移している。

牛肉は価格上昇が著しく、牛丼チェーンは早くから対応を迫られていた。日本は牛肉の輸入をオーストラリアとアメリカにそれぞれ4割超依存している。オーストラリアは2018年に起きた大規模な干ばつで牧草が枯れて餌がなくなった影響で、牛肉の対外輸出は本格的な回復に至っていない。アメリカも景気回復による人手不足で、肉の処理場や港湾での労働者確保が難しく、供給面で制約がある。

加えて需要面でも中国に買い負けているという事情がある。バラ肉などの特定部位ばかりを求める日本に対し、中国は部位にこだわらず1頭買いするため、中国向けが優先されている。エサとなる飼料価格も高騰しているため、当面牛肉価格は高値で推移するだろうが、今のところ牛丼チェーンは値上げによってある程度対応できている状況だ。

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