日本人の給料が上がらないのは「企業が渋る」から 「骨太」打ち出した岸田首相が本当はすべきこと
まさに「大山鳴動して鼠一匹」である。岸田政権は「新しい資本主義」を具体的な政策として打ち出すために、有識者や新興企業関係者などの改革派を交えて6カ月間奔走した。だが、6月7日に閣議決定されたその実行計画は、多くの参加者を大きく失望させる、形だけのものであった。
具体的には、岸田首相が掲げる「健全な成長と平等な所得分配は互いに必要である」という基本理念に対する自民党内や金融市場からの「社会主義を推進している」という非難に簡単に屈する形になった。「成長の果実を再分配しなければ、消費と需要は増えない」という主張は社会主義ではない。これは、標準的なマクロ経済学における、長年の評決なのである。
実質的な方策に欠けた中身
岸田首相の"譲歩"のせいで、政策文書は「成長と分配の好循環」の必要性を訴えるレトリックに終始しているが、それを実現するための実質的な方策は極めて乏しい。
岸田首相の妥協は、就任直後に年収1億円以上の人にキャピタルゲインと配当課税の強化を求めたことで株価が下落し、いわゆる「岸田ショック」を招いたことに端を発する。動揺した岸田氏は、この提案を撤回した。7月の参議院選挙を前にして、経団連を怒らせるわけにはいかないと判断したのだ、とある関係者は語る。
参院選での勝利を確実にするには、安倍晋三氏などの前任者が打ち出した失敗策の焼き直し案しか残されていない。
例えば、賃金について、岸田首相は企業に対して年3%の賃上げを求めるという過去の意味のない要求を繰り返した。また、最低賃金を時給1000円にするという長年の目標も繰り返したが、その達成期限は示さなかった。
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