日本人の給料が上がらないのは「企業が渋る」から 「骨太」打ち出した岸田首相が本当はすべきこと

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岸田首相のリーダーシップのあり方がさらに事態を悪化させている。複数の情報筋による指摘によると、1つには岸田首相自身は以前から賃金問題に関心を持っていたものの、「新しい資本主義の形」を作るために何が必要かを考えたことがなかったという。実際、このコンセプト自体は岸田首相自身のものではなく、重要な側近である元大蔵省官僚の木原誠二官房副長官が考案したと言われている。

さらに岸田首相は、安倍氏が集団安全保障で、菅義偉氏が脱炭素化で行ったように、自民党や官僚にいくつかの重要な優先事項を課しながら、トップダウン方式で指導できるような首相ではなく、「聞き上手」を自称する合意形成者である。

真の成長と分配による好循環を引き起こすには

さまざまな権力者の意見が異なる場合、岸田首相自身が解決策を押しつけるのではなく、権力者が妥協点を見いだせるように仕向ける。このスタイルは、ある状況下では生産的かもしれないが、岸田首相が主張するような大きな経済的「軌道修正」を生み出すことはできない。

では、参院選での勝利によって、岸田首相が年末に予定されている「5カ年計画」において、より積極的な主張をできるとなったらどう変わるか。その場合、真の「成長と分配の好循環」を引き起こすために、どのような手を打つことができるだろうか。

当初、岸田首相は前述のように、富裕層の株式所得に対する税率を引き上げることを提案していた。現在は一律20%である。その結果、主に投資によって年間1億円以上の所得を得ている人は、アッパーミドルクラスよりも全体の税率が低くなっている。

とはいえ、1億円以上の所得を持つ納税者は全体の0.01%程度に過ぎない。そのため、通常の所得税と同様、投資所得にもいくつかの区分を設けない限り、所得の平準化にはあまり効果がない。

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