「出生率1.35」手厚い国フィンランドに走った激震 1990年から2014年までは1.7を維持していた

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フィンランド国内の人口研究機関が2020年に発表したレポートによれば、柔軟で包括的な家族政策や幼児教育への投資増大が、長期的には出生率の向上につながる可能性があるという。

一方で、2020年、2021年と若干出生率が上昇している。コロナ禍ではあるが、行動制限などがあった中、ライフスタイルや価値観に再び変化が生まれているのかもしれない。ただ根本的な少子化解消とまでは言えず、推移を占うには、もう少し時間が必要だろう。

高齢化の波

高齢化も深刻だ。65歳以上の人口が総人口に占める割合(高齢化率)は2020年の段階で22.6%に到達しており、2030年には25%、2050年には30%を超えると予想されている。日本は28.7%(2020年)と世界で最も高齢化率が高いが、フィンランドも世界4位の数値だ。

フィンランドでは家族に関する感覚が日本と徹底的に異なり、実家や親との付き合い方も違う。子どもには老親を介護する義務はなく、老親と同居している家族もほとんどいない。家族というのは「親+未成年の子ども」のことであって、18歳で成人してしまえば、たとえ自分の子どもであっても別の個人。

ほとんどの場合、進学を機に成人は家を離れ、ひとり暮らしもしくはパートナーとの同居を始める。進学先がどんなに実家から近くともだ。それが可能なのは、フィンランドは総合大学も専門職大学も授業料が無料なのに加え、学生は毎月生活費と住居手当が国からもらえ、親に頼る必要がないためだ。

親の子どもに対する法的義務は、公式には子どもが法的な成人年齢(18歳)に達した日をもって終了する。ただし、成人後も互いに愛情が消えるわけではない。家族同士、さまざまなサポートを互いにし合っている。

成人した子どもがまだ就職していなかったり、仕事をやめたり学生生活に戻ったりした時など、お金を節約するため一時的に実家で同居することだってある。親と同居する25〜29歳の若者はフィンランド統計局の調査では10%。親が子どもに多少の生活費や住居費など金銭的な支援をすることも多い。

しかし、こうした場合でも同居を前提としないため、ある程度の距離をもって互いに支え合っているし、法律的には支える義務はない。それは、成人は独立した個人であり、それぞれが最大限働き、税金を納めて社会に貢献することが国づくりの基礎になっていることの表れでもある。

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