「出生率1.35」手厚い国フィンランドに走った激震 1990年から2014年までは1.7を維持していた

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フィンランドでは新政権が発足すると、各省庁の長官から政権に向けて提言書が出される。2019年夏に発表された提言書では、少子高齢化の中で十分な年金とサービスを確保するために、15~64歳の就業率を2023年までに現行の72%から75%へと引き上げる必要があるとされている。

そのためには新たな雇用を創出し、失業率を5%以下に抑えなければならない。また、長期的には就業率80%を目指す必要があるという。

フィンランドでも、学校にも通わず仕事もしていない若者の存在が社会問題として認識され始めており、彼らへの就業支援が熱心に行われている。それでも就業率増には限界がある。

このような状況で、労働力として期待されているのが移民だ。地方ではフィンランド語やスウェーデン語ができないと生活しづらいが、都会なら英語ができれば支障はないし、英語で仕事ができる会社も増えてきた。

ヘルシンキ市統計(2019年)によると、2000年以降、両親もしくは本人が海外から移住してきた人たちの割合はそれまでの3倍に増え、全住民の16.5%を占めるまでになった。

多くは欧州からだが、アジア、アフリカからの移民も少なくない。公用語以外を母語とする人も増えており、2030年までにヘルシンキ市の人口の23%を占めることになると予想されている。

積極的ではなかった移民受け入れ

もともとフィンランドは移民受け入れに積極的な国ではなかった。言葉も独特で、寒くて小国、おまけにオープンな労働市場を持っていないため、魅力的な移住先だったとは言えない。しかしEU加盟国が増えるにつれて留学や旅行などで訪れる人も多くなり、フィンランドの企業もグローバルに展開し始めると、移民の数は徐々に増えていった。

一時的ではなく永住や継続的な滞在が認められた移民へのサポートは手厚い。ロシア出身で祖父母がフィンランドにルーツがある友人は、仕事がなく、フィンランド語もあまり話せなかった移住直後から、最低限の生活は保障されていた。さまざまな手当が支給され、福祉サービスもフィンランド人と変わらないものを受けることができていた。

彼女は移住後に修士号を取得。家族や親戚も徐々にフィンランドに移住し、移民用のフィンランド語講座に通い、国や自治体の支援を受けながら仕事に就いていった。

現在はフィンランドにルーツがあっても優先的に移住できるわけではなく、滞在ステータスによって受けられるサービスは異なる。それでも、結婚などにより永続的にフィンランドで暮らす前提で受け入れた場合には、できるだけ現地での生活に馴染み、溶け込めるようサポートしていこうという国の姿勢が強く感じられる。

2022年3月以降、ウクライナでの戦争により避難してきた人たちの難民申請が発生している。ウクライナの人たちはビザがなくとも3ヵ月はフィンランドに滞在できるため、件数はまだ多くないが、4万〜8万人が避難してくると予想されており、滞在先の確保などの準備を進めている。

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