アメリカ「中絶反対派」がこんなにも強力な理由 小さな街で取材してわかった反対派の実態
カトリック教徒であり、中絶を選んだ地元女性に取材すると「自分の決断を後悔はしていない。若くて知識も経済力もなかった当時の自分には、中絶以外の選択肢はなかった。中絶前も中絶後も、自分がカトリック教徒であることは変わりない」と語った。
この女性は、同じ州内の離れた街で、誰にも言わずに中絶をすることを選んだ。自分の街の中絶クリニックの駐車場に車をとめただけで、個人を容易に特定され、中絶反対派から糾弾される可能性があるからだ。
中絶擁護派と反対派が激しくぶつかるデモ
その後、首都ワシントンで開催された「中絶反対1万人デモ」に参加するスミスさん一行30人の旅を同行取材した。デモ参加者の多くは高校生だった。彼らが手作りで用意してきた「中絶は殺人だ」と書かれたプラカードを掲げて行進を始めると、アメリカ最高裁の前で「中絶は女性の選択肢であり権利だ」と主張するプロチョイス(中絶権利擁護)派に取り囲まれた。
するといきなり「あんたたちは命を殺しているんだよ。それがわからないのか!」と叫ぶ集団が現れて、中絶擁護派の持つピンク色の風船を引きずり下ろした。すぐに警官が駆けつけた。
中絶反対を表明する人たちの中にも穏健派から過激派までさまざまな集団があり、過激派は血まみれの胎児の写真を拡大したパネルを作り、それを中絶擁護派に投げつけていた。
賛美歌を歌いながらマリア像を掲げて歩くスミスさんと高校生の一行は、この過激な衝突に面食らって後ずさっていた。スミスさん一行が着ているのは、ミシガンの地元の地名のロゴが入ったスウェットやジーンズやジャージに白いスニーカーだ。
対して、中絶の権利を守ろうと主張する人々は、黒い革ジャンにピアス、さまざまな色に染めた髪の毛など都市型ファッションが主流で、その違いは一目瞭然だ。
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