EV普及のカギは「住まい」にあると言える納得理由 既存住宅などへの「充電器の普及」が課題だ

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余談だが、前述したとおり住宅での普通充電の多くでは200Vの専用コンセントで行うが、一般家庭には出力が弱い100Vのコンセントしかないケースも多い。それでも充電ができなくはないが、出力が弱いためフル充電までに丸1日程度の時間がかかる。

EVの充電をしながら、家電製品を使うとブレーカーが落ちてしまうというケースもある。非常に使い勝手が悪く現実的ではないから、EV用の充電器などの専用設備が必要となるのだ。

では、現状、住宅事業者がこの問題にどのように取り組んでいるかだが、新築戸建て住宅については、注文・分譲、さらにはオーナーが所有しているか否かにかかわらず、EV充電のための対応がおおむね進んでいる。

住宅用のEV専用充電器の事例(筆者撮影)

具体的には、普通充電を行えるようにするための充電コンセントと分電盤(ブレーカー)の設置、あるいは将来的に設置できるようにするための先行配線を確保しておくなどというものだ。

「おおむね」としたのは、ローコスト分譲住宅などに導入されていない、先行配線などが行われていないケースがあること、さらにクルマを必要としない世帯では、駐車スペースそのものがない建物も存在するためである。

課題は既存住宅、共同住宅、月極駐車場への設置

新築で設置が進展しているのは、設置に関わる作業などが建物全体工事費に吸収され、負担が小さくなるためだ。一方で、既存住宅の場合は大がかりな工事が必要となることがあり非常に高額になるケースもある。よって、既存住宅における状況改善がEV普及の大きな課題となるわけだ。

このほかに大きな課題となりそうなのが、集合住宅の駐車場と月極駐車場への充電器の設置だ。前者においてはとくに、敷地に余裕のないものではタワータイプの機械式であることもあり対応が難しい。

中でも既存の分譲マンションだと、設置工事という新たな経済的負担に加え、管理組合での合意形成の難しさという問題もあり、やはり設置には大きなハードルが横たわっていると言わざるをえない。

後者にも、充電器設置にはいくつかの問題点がある。もともと、月極駐車場は少ない初期費用で事業を行える土地活用策。そのため、追加投資をして新たに充電器を設置する土地オーナーは少ないだろう。

コストが高額なこともネック。設備は1台当たり10万円を超えるケースが多く、加えて電線が通っていない場所では、設置にあたって電線の引き込みを行う電気工事など、付帯する費用が発生するからだ。

「自宅や月極駐車場に充電器があるのならEVを購入してみたい」などという声をよく耳にするようになっているが、今後、そうした思いを実現する新たな技術革新が起こることが強く期待される。

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