北海ブレントは夏場120ドルがピークで、その後は60~70ドルへ調整《アフリカ・中東政情不安の影響/専門家に聞く》
--今後の中東情勢緊迫化の影響は。
チュニジアで大統領が追放されたのが1月14日。それがエジプトに波及し、ムバラク政権が2月11日に崩壊し、懸念が強まった。エジプトは産油国だが、日量74万バレル程度で輸出余力もあまりない。一方で、日量180万バレル(09年)が輸送されるスエズ運河と、日量110万バレル(同)が輸送されるスメド・パイプラインという、重要な輸送ルートを持つ。政情不安でこうしたルートの輸送停止懸念が高まり、主要な輸送先である欧州での供給不安につながり、市場が近い北海ブレントの価格が上がりやすくなった。
しかし、運河やパイプラインの操業は今も平常通りやっており、タンカーの通行隻数はむしろ増えたとも言われている。
むしろ市場の懸念は、アラブの盟主であるエジプトへ伝播したこと自体にある。他の独裁政権、産油国へ波及しかねないことを懸念している。
--リビア情勢が内戦状態に陥り、緊迫化している。
リビアは日量160万バレル近くを生産しており、欧州中心に輸出している。これが途絶するおそれが出ている。
もっとも、OPECの余剰生産能力は500万バレルあり、リビアだけの途絶なら補うことは可能だ。しかし、たとえばイランの供給に問題が出れば、イランの生産量は日量400万バレル近くあり、リビアの分と合わせると、今の余剰生産能力では足りない、といった話になりかねない。
--米国の軍事基地もあるバーレーンの情勢も厳しさを増している。
バーレーンは、産油量自体は比較的少ないが、米国の軍事基地であるとともに、湾岸産油国の中で1人当たりGDPが最も多い国だ。貧困層の多いチュニジアやエジプトとは違って、政権への不満が出にくい、とは言えなくなっており、(1人当たりGDPが比較的高い)サウジアラビアやオマーン、クウェートも例外とは言えなくなっている。