就活でガクチカを聞くのはもういい加減やめよう 「学生時代に力を入れたこと」に囚われる人々の呪縛

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ゆえに、就活で跋扈するのが普段のアルバイト体験を劇的に語ろうとする学生たちだ。面接では「居酒屋でのアルバイトで、コミュニケーション能力を磨きました。笑顔を心がけ、お客様にもいつも、笑顔で帰ってもらいました。この力を営業の仕事で活かしたいと思います」という学生がよく出現する。面接官からすると「またか」とウンザリするような、お決まりの自己PRだ。お客さんが笑顔で帰ったのは生ビールが美味しかったからではないかと言いたくなる。就活ノウハウでは「だから、アルバイトネタは、差別化できないから話すな」というものが伝授される。

この問題はこじれている。アドバイスするとしたら、元面接官視点では、「もっと工夫してアピールしろ」と言いたくなる。同じ居酒屋バイトでも、チームワークや売り上げアップなどアピールできるポイントはあるだろう。大学教員視点では、勉強の話をしてほしいと悲しんだりする。

ただ、学生の状況を考えると、激しく同情する。学生生活において、時間もお金も余裕がない。アルバイトをしなければ学生生活が回らない。居酒屋でのアルバイトは人手不足で彼ら彼女たちを求めている。モチベーションアップ施策にも手厚く取り組んでいる。飲食店でのアルバイトは、彼ら彼女なりに、精一杯努力した、「学生時代に力を入れたこと」なのだ。
「コミュニケーション能力」を「アピールさせている」のは誰なのか? 経団連が毎年、発表している新卒採用で重視する点として、「コミュニケーション能力」が十数年にわたり、1位となっている。

「居酒屋でアルバイトし、コミュニケーション能力を身につけた」という「量産型就活生」が、納得のいく内定に至ることができるのかどうかという問題はさておき、彼ら彼女たちはそう言わざるを得ないし、大人たちにそう言わされているのだと解釈したい。これも彼ら彼女たちなりの精一杯の「ガクチカ」なのだ。

供給されるガクチカ、誇張、装飾されるガクチカ

学生たちがエントリーシートに書いてきた「ガクチカ」をそのまま信用していいのか。ここでも立ち止まって考えたい。「ガクチカ」は本当に学生が書いたものなのか。この「ガクチカ」は、学生が自ら頑張ったものだろうか? 大学が用意した機会に乗っただけではないか。

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