就活でガクチカを聞くのはもういい加減やめよう 「学生時代に力を入れたこと」に囚われる人々の呪縛

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もともと、ガクチカは本人の価値観、行動特性、思考回路、学ぶ姿勢、勝ちパターンなどを読み解くための「手段」だった。「世界一周」「サークル立ち上げ」「学園祭の模擬店で大成功」などという話を期待しているわけではない。目立たなくても地道な取り組みが評価されることもある。しかし、ガクチカが学生、企業双方で過度に「目的化」してしまったのが、現代の就活なのである。

学生にガクチカを問うのは、コロナ前から酷だった

もっとも、学生がガクチカに困りだしたのは、新型コロナウイルスショックのせいなのだろうか? よくある「新型コロナウイルスショックの影響で、大学生活が2019年までよりも制限され、ガクチカで学生が困っている」という言説は、本当だろうか? 疑ってかからなくてはならない。

私の主張を先に書こう。ガクチカに困ると言われたこの世代は、過去最高に内定率が高い。また、ガクチカはコロナ前から悩みの種だったのだ。

就職情報会社各社が発表した、2022年6月時点での内定率は過去最高だ。たとえば、リクルート就職みらい研究所が発表している就職プロセス調査によると、6月1日時点の内定率は73.1%となっており、前年同時期比4.6ポイントアップ、6月選考解禁となった2017年卒以降最も高くなった。

これはモニター調査であり、実態よりも高くなりがちではある。就職情報会社各社の渉外担当者が大学に対して「実際はこんなに高くありません」と言うほどだ。また、最終的な数字を見なければ結果の先食いにもなる。ガクチカに自信がある学生が先に内定しているともみることもできるだろう。とはいえ、ガクチカに困っているはずの学生たちに、これだけ内定が出ている点に注目するべきだろう。

学生は新型コロナウイルスショック前からガクチカに悩んでいた。無理もない。今の学生はお金も時間もない。奨学金やアルバイトに依存しなければ、大学生活が回らない。自宅から通わざるを得ず、遠距離通学する学生もいる。筆者は千葉県市川市の大学に勤務しているが、茨城県や、千葉県の房総半島から通う学生もおり、通学時間が片道2時間以上かかる学生もいる。よく若者の○○ばなれというが、その原因はお金と時間の若者離れだ。

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