鋼材価格、1トン当たり「10万円以下」に戻らぬ事情 取引先からは強気の値上げ姿勢に不満の声も

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1つめは中国要因だ。

再度のロックダウンなどで経済の減速が止まらず、中国、アジアの鋼材市況が一段と低下すれば、日本の鋼材価格の下落圧力が強まる。

この可能性はそれほど高くない。秋に開かれる共産党大会に向けて経済を立て直す動きが強まるとみられるからだ。そうなれば、鉄鋼需要、鋼材市況ともにプラスとなる。また、「現在の原料価格では中国メーカーも利益を出せない」(日鉄・森副社長)ことも鋼材価格の下支え要因となる。

脱炭素の流れで石炭分野の資源開発が進まない

もう1つのポイントは原料価格の行方だ。

原料炭や金属類の高騰はさすがに行き過ぎで、徐々に落ち着いていくという見方は多い。だが、「脱炭素で石炭の資源開発を積極化する動きがなく、価格の高止まりは避けられない」「鋼材価格が1トン当たり10万円を割るような時代には戻らないのではないか」といった見立てが鉄鋼業界には多い。

この先、カーボンニュートラルスチールを目指すうえでは、水素還元の技術開発、設備実装など膨大なコスト負担が待っている。鋼材価格が安くなる未来図は描きづらい。

山田 雄大 東洋経済 コラムニスト

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やまだ たけひろ / Takehiro Yamada

1971年生まれ。1994年、上智大学経済学部卒、東洋経済新報社入社。『週刊東洋経済』編集部に在籍したこともあるが、記者生活の大半は業界担当の現場記者。情報通信やインターネット、電機、自動車、鉄鋼業界などを担当。日本証券アナリスト協会検定会員。2006年には同期の山田雄一郎記者との共著『トリックスター 「村上ファンド」4444億円の闇』(東洋経済新報社)を著す。社内に山田姓が多いため「たけひろ」ではなく「ゆうだい」と呼ばれる。

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