<脾(ひ)は湿を悪(にく)む(=胃腸は湿が多いと働きが悪くなる)>というのが漢方の基本ですが、多くの人は水分を摂りすぎているように感じます。
熱中症予防のための、定期的な水分補給は大切ですが、水毒の症状がある人は、まずは水分の摂り方を見直したほうがいいでしょう。
年齢や運動量によって必要な水分量は違いますが、おおまかな目安は「食べて1000、飲んで1000」です。食事で1日に1000mLぐらいの水分は摂れるので、残りの約1Lを水分で摂ればいい、というわけです。1日に2Lもの水を飲んでいたら、余分な1Lは体外に排出しなければならず、それがうまくいかないと水毒になるのです。
40~50代までの健康な人であれば、30分ごとに1~2口飲むのが理想です。同じ1Lでも、200mLを5回で飲むのと50mLを20回で飲むのとでは、胃腸への負担は大きく異なります。大きなマグカップだと飲みすぎることがあるので、その場合は小さいカップに変えてみるのも1つの手です。
冷たい食べものや氷入りの飲みものは水毒の原因になります。なるべく体温以上のものを摂るように。外食の機会が多い人は、「氷を入れないで」とオーダーする習慣をつけると、水毒を防ぐことができます。口に入れて冷たいと感じたらすぐに飲み込まず、口の中で温めてから飲み込むといいかもしれません。
体の水はけをよくする漢方薬は「五苓散」
さて、これまで紹介した養生を実践しても不調が改善されなければ、漢方薬の登場です。水毒に対する漢方処方は数多くありますが、代表的なものが「五苓散(ごれいさん)」です。
五苓散は漢方の古典「傷寒論(しょうかんろん)」に記載されている処方で、体内の水分代謝を調整し、水分のバランスを取ってくれます。
「蒼朮(そうじゅつ※製薬会社によっては白朮:びゃくじゅつ)」「茯苓(ぶくりょう)」「沢瀉(たくしゃ)」「猪苓(ちょれい)」「桂皮(けいひ)」の5つの生薬から構成されています。桂皮は香辛料のシナモン(主に用いられるのはセイロンニッケイの仲間)の樹皮を乾燥したもの。料理や食品にも用いられるので、なじみがあるかもしれません。
五苓散には利尿作用のほか、胃腸機能を高めながら水分バランスを調整する作用があります。
雨や台風など、低気圧が来る前の不調(めまいや頭痛)にも有効で、当院にも、梅雨の時期だけ五苓散を希望される患者さんがいらっしゃいます。二日酔いやお酒を飲んだ翌日のむくみも、体内の水分の調整ができなくなって生じる症状なので、五苓散で対処します。飲み方については、漢方に詳しい医師や薬剤師に聞いてみるといいでしょう。
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