中国で鋼材の市場価格が下落している。(建物の鉄筋などに使われる)異形棒鋼の10月渡しの先物価格は5月26日、年初来最安値に迫る1トン当たり4505元(約8万5467円)をつけた。これは2022年4月につけた直近の高値より13%安い水準だ。同じく熱延コイルは1トン当たり4632元(約8万7876円)と、4月の高値から14%下落した。
価格下落の主因は需要の後退だ。中国鋼鉄工業協会のデータによれば、主要鉄鋼メーカーが5月中旬時点で抱える鋼材の在庫は1997万7400トンと、年初に比べて76.8%も増加した。在庫量がここまで積み上がったのは2020年3月上旬以降では初めてだ。
「例年なら4~6月期は鋼材の需要が旺盛な時期だが、今年は5月になっても需要回復の兆しがなく、在庫消化の見通しが立たない」。鋼材の先物取引大手、南華期貨のアナリストの李春陽氏は、厳しい現状をそう話す。
不動産市況の低迷にコロナ禍が追い打ち
需要の弱さの背景には、不動産市況の低迷の長期化がある。鋼材は(建築、自動車、インフラなど)さまざまな用途に使われるが、業界別の需要で見ると不動産業界が全体の約4割を占めているからだ。
「建築工事向けの異形棒鋼の消費量は、以前は1週間当たり平均約350万トンだった。それが現在は同300万トン前後に減少している」。財新記者の取材に応じた北京の鋼材商社の担当者はそう話す。
この鋼材商社は顧客の多くが不動産デベロッパーだが、いずこも(金融機関からの)資金の借り入れや物件の販売に苦戦しており、新規の開発案件はほとんどない状況だという。
「仮に(すでに着工済みの)既存の開発案件があっても、新型コロナウイルスの防疫対策の影響で人の動きが制限され、建設労働者を現場に集めることができない。そのため工事が進捗せず、鋼材の消費低迷に拍車をかけている」と、この担当者はため息をつく。
(財新記者:趙煊)
※原文の配信は5月26日
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