中国では新型コロナウイルスの再流行が各地で続き、製造業の景況感を押し下げている。しかし1カ月前に比べると、先行きに対する悲観がいくぶん和らいできたようだ。6月1日に発表された5月の財新中国製造業購買担当者指数(製造業PMI)は48.1と、好不況の判断の目安とされる50を3カ月連続で割り込んだものの、前月比では2.1ポイントの上昇を記録した。
製造業の5月の事業活動は、供給側と需要側の双方で収縮が続いた。ただし(供給側の指標である)生産指数と(需要側の指標である)新規受注指数は前月比ではそろって上昇に転じ、改善幅は需要サイドのほうが相対的に大きかった。
生産活動の停滞に関しては「新型コロナの防疫措置に伴う制約が、生産計画や物流に及ぼす影響が大きい」との声が、調査対象企業から広く聞かれた。また、一部の企業からは「5月の需要は(全体的には)4月より改善したものの、海外からの新規受注の落ち込みが目立った。(国際物流の混乱で)商品を期日通りに運べないことがネックだ」との声が寄せられた。
雇用と物流が最重要課題
事業活動はいくぶん回復した一方で、雇用は悪化が続いている。製造業の5月の雇用指数は前月よりも低下し、過去10カ月のうち(2022年3月を除く)9カ月にわたって拡大基調と縮小基調のボーダーラインを割り込んでいる状況だ。新型コロナの流行と新規受注の減少に対応するため、 調査対象企業の多くが新規雇用を絞らざるをえなくなっている。
さらに原材料費、燃料費、物流費などの高止まりが、企業のコスト管理の困難に拍車をかけている。5月の製造業の(仕入れ価格の指標である)購買価格指数は24カ月連続でボーダーラインを上回った。その一方、(販売価格の指標である)工場出荷価格指数は需要低迷を背景に2020年5月以降の最低値を記録、多くの企業が利ザヤの縮小に直面している。
「新型コロナの再流行が中国経済に及ぼす負の影響は、2020年(の最初の流行時)を上回るかもしれない。中国政府にとっては、雇用の維持と物流の円滑化が最重要課題だ。サプライチェーンの寸断や詰まりを改善して、企業活動の正常化を後押しすることが、市場の安定を支え、雇用を確保することにつながる」。財新グループのシンクタンクCEBMのシニアエコノミストを務める王喆氏は、そうコメントした。
(財新記者:程思煒)
※原文の配信は6月1日
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