中国国務院は5月23日に常務会議を開催し、(景気悪化に対応して)中国経済の安定化を図る広範な政策パッケージを打ち出した。そのなかで、自動車の販売促進を目的に(大気汚染や交通渋滞の軽減のために導入された)自家用車の購入制限を緩和することや、乗用車の自動車取得税の一部を総額600億元(約1兆1496億円)規模で減免する方針が示された。
翌24日の時点では自動車取得税の減免の範囲や、その開始時期は明らかにされていない。だが、中国政府は自動車取得税の減免措置を過去にも2回実施しており、当時低迷していた自動車市場をテコ入れした実績がある。
中国の自動車取得税の税率は、車種を問わず(車両価格の)一律10%となっている。1回目の減免措置は、2008年のリーマンショックをきっかけに波及した世界的な金融危機の影響を緩和するために実施された。具体的には排気量1600cc以下の小型車を対象に、2009年1月20日から同年末まで自動車取得税を半分の5%に軽減する措置が取られた。
その効果は絶大だった。2009年の中国の自動車販売台数は前年比46%増の1364万4800台に急拡大。この年、中国はアメリカを抜いて世界最大の自動車市場に躍進した。
過去同様の措置では効果に疑問
2回目の減免措置は2015年10月1日から2016年末にかけて、やはり排気量1600cc以下の小型車を対象に実施された。軽減税率も1回目と同じ5%だった。
だが、2回目の措置は消費者の自動車購入意欲を刺激する効果はあったものの、その程度は1回目とは比較にならなかった。2016年の中国の自動車販売は前年比13.7%の増加にとどまり、措置が縮小された2017年の増加率は同3%に失速した。
なお、過去2回の減免措置で小型車だけが対象とされたのは、当時の中国市場では自動車を初めて購入するユーザーが大きな比率を占めていたことが背景にある。これは政策的に的を射た対応だったと言えるだろう。
しかし、現在の自動車市場の状況は当時から大きく変化し、需要の主流は(初めての購入ではなく)買い換えや買い増しに移行している。また、過去の減免措置の時代は市場で販売されるクルマのほとんどがエンジン車だったが、ここ数年はEV(電気自動車)に代表される「新エネルギー車」の比率が急上昇している。
そのため、過去と同様の減免措置を反復しても、自動車市場へのテコ入れ効果はあまり期待できないかもしれない。
(訳注1:新エネルギー車は中国独自の定義で、EV、燃料電池車[FCV]、プラグインハイブリッド車[PHV]の3種類を指す。通常のハイブリッド車[HV]は含まれない)
(訳注2:中国財政省と国家税務総局は5月31日、車両本体価格が30万元[約575万円]以下かつ排気量2000cc以下の乗用車を対象に、6月1日から12月31日まで自動車取得税を5%に減免すると発表した)
(財新記者:安麗敏)
※原文の配信は5月24日
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