日本の防衛産業が見限られるのは希望がないから 防衛費をいくら増やしても企業撤退が止まらない

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防衛産業は中高年になっても防衛省という親に食わせてもらっている状態だ。これは先に述べたように、政府や防衛省の当事者能力の欠如が大きいが、メーカーも防衛省の仕事をスプリングボード(飛躍のきっかけ)にして、リスクをとっても海外市場に参入するという努力をしてこなかった。防衛省の仕事だけしていれば、確実に金が入る、という安楽な道を選んだように見える。

対して韓国、シンガポール、トルコ、UAEなどの中進国、途上国は20世紀末ごろから国際市場に果敢に挑戦した。結果これらの国々の技術は急速に伸びてきた。それは市場で性能、コスト、サービスなどを徹底的に鍛えられたからだ。いまだに日本の防衛産業の技術が世界トップクラスだというふうに考えている国防族の議員は少なくない。実態は一流とはとても言えない。

「親方日の丸」気分が抜けない

わが国の防衛産業にかかわる企業は「親方日の丸」気分が抜けず、将来の売り上げが下がっていくことがわかっていても何も手を打たずに、問題を先送りにしてきた。

政府、防衛省・自衛隊、そしてメーカーに防衛産業が産業・ビジネスだという認識が欠如している限り、いくら予算を増やしても中長期的な事業の継続は難しいだろう。しかもその予算増加も財源の裏付けがなく、国債で賄うならば途中で息切れして、後で予算が大幅に減らされる可能性は極めて高い。賢明な経営者ならばそのことを織り込んで判断をするはずだ。

必要なのは政治が現状を正しく認識して、まともな防衛産業振興の計画を策定することだ。またメーカーは事業のリストラクチャリングと世界市場への参入で汗と涙と血を流す必要があるが、その覚悟があるかどうかだ。それがないならば今後も他国の何倍も高く、低性能、低品質の装備の調達をつづけて、税金をドブに捨て続けることを甘受しないといけない。

清谷 信一 軍事ジャーナリスト

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きよたに しんいち / Shinichi Kiyotani

1962年生まれ、東海大学工学部卒。ジャーナリスト、作家。2003年から2008年まで英国の軍事専門誌『ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー』日本特派員を務める。香港を拠点とするカナダの民間軍事研究機関Kanwa Information Center上級アドバイザー、日本ペンクラブ会員。東京防衛航空宇宙時評(Tokyo Defence & Aerospace Review)発行人。『防衛破綻ー「ガラパゴス化」する自衛隊装備』『専守防衛-日本を支配する幻想』(以上、単著)、『軍事を知らずして平和を語るな』(石破茂氏との共著)など、著書多数。

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