日本の防衛産業が見限られるのは希望がないから 防衛費をいくら増やしても企業撤退が止まらない

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ところが機体の規模も、低翼機と高翼機という構造も違う機体でそれは無理だった。各社の担当するコンポーネントもそれぞれ別個に開発、生産することになった。防衛装備庁の資料によればP-1の開発費は3101億円、C-2は2497億円、合計5598億円となっている。

無理な共用化に加えてさらにこの2機種と、飛行艇US-2の開発も重なり、タダでさえ少ない日本の設計人は忙殺されてスケジュールの遅延と、開発ミスによる手直しが続き。開発費と調達単価は高騰した。当然ながらP-1、C-2も調達機数が大きく削られた。

これらの機体を政府は輸出を試みているが成功していない。その一因として高コスト体質が大きな足かせとなっている。財務省によれば空自のC-2輸送機の維持費は、維持費が高価なステルス戦闘機のF-35Aより高い。財務省の資料によればC-2のCPFH(Cost Per Flight Hour:飛行時間当たりの経費)は約274万円、米空軍のC-130Jが 約61.8万円、C-17が約150.9万円(※1ドル/ 112円 平成30年度支出官レート)だ。

将来性に見込みなしと見限られても仕方ない

1機当たりのLCC(ライフ・サイクル・コスト)はC-2が約635億円、C-130Jが 約94億円、C-17が約349億円である。C-2の1機当たりのLCCはC-130Jの6.8倍、C-17の1.8倍である。これがペイロード(有償搭載量)1トン当たりのLCCになるとC-2は24.4億円、C-130Jは4.7億円、C-17が4.5億円であり、C-2の1機当たりのLCCは、C-130Jの5.2倍、C-17の5.4倍となり、これまた比較にならないほど高い。

さらに言えば、主契約者の川崎重工業には輸出する気がないように、筆者には見えている。輸出するとなると外国に営業やサービスの拠点も必要である。民間転用であれば多額の費用がかかる耐空・型式証明も取らないといけない。そのようなリスクを冒さず防衛省の仕事だけをこなしているほうが楽だからだろうか。

防衛産業の利益や規模を拡大して将来に備えるのであれば、事業の統廃合は必要不可欠だ。防衛産業では同じ分野で複数の企業が棲み分けをして、仕事を分け合っている。仕事が減れば事業規模がさらに縮小して事業が成り立たないのは目に見えている。だが政府や防衛省は傍観しているだけだ。

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