「イスラム国」の本質とは、いったい何なのか "時代錯誤"にみえる演出は戦略かもしれない

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さらにもっと時代を遡れば、かつて13世紀にモンゴル人はタタール人と組んでバグダッドを徹底的に破壊したことにも話は及ぶ。このスンニ派イラク人にとって恥辱的な記憶を、彼らはシーア派と欧米勢力が手を組んだ政治状況を攻撃するための武器として利用する。歴史的な正統性という神話を求めて、現代的なブランディング手法を繰り広げていると言えるだろう。

残虐さの裏に隠されているメッセージ

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Facebookを通してつながった「アラブの春」、Twitterを介して広がった「緑の革命」、これら民衆の革命といわれたものがことごとく失敗する一方で、少数のリーダーに率いられる組織が着々と勢力を拡大しつつある現状。これを民主主義国家は、どのように解釈すればよいのか。彼らの残虐な行為の裏に隠されたメッセージが突きつけるものは重い。

その正体が善であれ悪であれ、歴史に学ぶものは的確な戦略を立てることができるし、新しいテクノロジーを使いこなすものは効果的な戦術を実行することができる。そして最終的には、勝ったものこそが正義を作り変えられるということもまた、歴史が教えてくれる事実である。

ビジネスの世界に目を転じれば、新興国市場においてすでに先進国でヒットしたものを模倣した出来損ないの商品がシェアを獲得することも珍しくない。「あんなパクリ商品が」などとグレーな存在を侮っているうちに改良を繰り返し、先進国市場にも存在感を出してくる。本書を読めば「イスラム国」のケースが、そんな国家レベルでの「リバース・イノベーション」を起こしつつあるのではないかとさえ思えてくる。

今月、実に多くの「イスラム国」関連書籍が書店の店頭をにぎわせることだろう。その中でも、最初に手に取るべき一冊としておすすめしたい。 

内藤 順 HONZ編集長

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ないとう じゅん / Jun Naito

HONZ編集長。1975年2月4日生まれ、茨城県水戸市出身。早稲田大学理工学部数理科学科卒業。広告会社・営業職勤務。好きなジャンルは、サイエンスもの、スポーツもの、変なもの。好きな本屋は、丸善(丸の内)、東京堂書店(神田)。はまるツボは、対立する二つの概念のせめぎ合い、常識の問い直し、描かれる対象と視点に掛け算のあるもの。

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