英誌論客が語る後藤健二さんの"記者魂"

英エコノミスト誌元東京支局長が緊急寄稿

後藤健二氏の勇気と、責任感はジャーナリストとして世界一流と言っていい(写真:Ahmed Muhammed Ali/Anadolu Agency/Getty Images)

過激派組織、イスラム国武装集団に拘束されているジャーナリストの後藤健二氏(47)は、典型的な記者ではないし、典型的な日本人でもない。しかしその勇気と、危険な紛争地帯に生きる普通の人々の姿を伝えようという責任感は、ジャーナリストとして世界一流と言っていい。昨年、後藤氏をシリアに向かわせたのも、そうした彼の勇敢な気質だった。

イスラム国武装集団は1月24日、後藤氏と共に拘束されていた湯川遥菜氏の殺害を発表すると同時に、後藤氏を解放する条件としてヨルダンに収監されている女性死刑囚との交換を要求した。さらに27日には、この要求に応じなければ、後藤氏の命はあと24時間しかないとするビデオを公開した。

一般の戦争報道とは違う特徴

Henry Tricks●英エコノミスト誌メキシコ・中米支局長。英フィナンシャル・タイムズ紙などを経て2006年エコノミスト誌の資本市場担当編集者として入社、金融担当編集者を経て2009年東京支局に就任

私は2010年、英エコノミスト誌の東京支局長だった時に後藤氏と知り合った。家が近所だったのだ。家族にとって彼は愛すべき父親であり、今は3人の子どもがいる。温厚で穏やかな語り口の後藤氏と、筋金入りの戦争ジャーナリストのイメージを重ね合わせるのは難しい。

だが、後藤氏のリポートには一般の戦争報道とは大きく異なる特徴がある。戦争の勝者や敗者を追いかけるのではなく、悲惨な状況に追い込まれた普通の人々、とりわけ子どもたちの姿を伝えることに力を注いでいるのだ。こうした普通の人たちの頑張る姿が自分を動かしているのだと、後藤氏は言っていた。でも、交通手段も乏しい危険地帯にどうやって入るのか――そう聞かれると、どこに行っても普通の人たちが毎日の暮らしで使っている道があると、彼は答えていた。人々が道を示してくれるのだ、と。

1996年に通信社インデペンデント・プレスを立ち上げてから、後藤氏はチェチェン、アルバニア、コソボ、シエラレオネ、リベリア、アフガニスタン、イラク、シリアなど、数え切れないほどの紛争地帯からリポートを続けてきた。フリーランスのジャーナリストだから、費用の多くは自己負担だ。日本のメディアは自社に所属する記者を危険地帯に送りたがらない。そうした場所に自ら赴き現状を伝える後藤氏は、日本の企業ジャーナリストたちから広く尊敬されている。

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